世界遺産を無断で掘削 町石道の12カ所

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成し、国史跡となっている高野山への参詣道「町石道(ちょういしみち)」の和歌山県かつらぎ町内の一部で、無断で掘削や盛土がされているのが見つかり、町は18日、文化財保護法違反容疑で県北部在住の80代男性を刑事告発した。

町石道は、九度山町の慈尊院から高野山奥之院へとつながる全長約24㌔の参詣道。昔の距離の単位「1町(約109㍍)」ごとに「町石」と呼ばれる216基の石塔が設置され、町石の数字を見ることで、おおよその場所が分かるようになっている。

歴史は9世紀にさかのぼると考えられ、11世紀には町数を記した木製の卒塔婆が建っていたことが分かっている。

町教育委員会によると、町石道を通った人から5月21日、「一部が毀損(きそん)されている」との通報が町にあり、調査したところ、町内にある121町石から141町石までの約2㌔の区間の計12カ所で、無断の掘削や盛土が見つかった。

溝が掘られていたり、土壁の一部が掘られてなくなっていたり、石が敷き詰められたりしており、調査の中で、80代男性が掘っているのを目撃したなどの情報が寄せられた。

世界遺産に登録されて以降、これほど大規模な資産の毀損は初めてという。

町は18日付でかつらぎ署に刑事告発し、文化財保護法違反容疑で捜査が進められている。

捜査の後、現場の復旧を急ぐ方針だが、文化庁の許可が必要なこと、山中のため重機などを使った作業が困難なことなどから、同庁や県教育委員会と復旧の方法などを協議していく。完全復旧の時期は、まだ見通しが立っていない。

県教委は「町石道が毀損されたことは誠に遺憾。早急かつ適切に現状復旧に取り組む。また、再発防止と文化財保護の啓発について、関係市町とともに取り組んでいく」とコメントしている。

 

無断掘削で溝ができたかつらぎ町内の町石道(町教委提供)