室内にツバメが巣作り 和歌山市の岡本さん宅

春から初夏にかけて、子育てに励むツバメの姿が各地で見られるが、和歌山県和歌山市府中の岡本良子さん(68)の家では、なんと部屋の中に巣作りし4羽のひなが誕生。岡本さんは「暗いニュースが多い中、ツバメたちが楽しく明るい時間を運んできてくれました。貴重な経験をさせてもらって感謝です」と笑顔。せっせと餌を運ぶ親ツバメと、「ピーピー」とさえずるひなたちとの日々を楽しんでいる。

「今までわが家には、軒先でさえ一度も巣を作りに来たことはないんですよ」と岡本さん。4月下旬、空を気持ち良さそうに飛ぶツバメの姿をよく目にするようになり、5月7日、愛犬のテッシー(3歳、オス)の出入りのために開けっ放しにしていた掃き出し窓から、初めてツバメが家の中へ。以来、ツバメ一家とのにぎやかな同居生活が始まった。

その部屋は寝室。テッシーも過ごす部屋だが、両者は警戒することもなく、そのうち、つがいと思われる2羽が日中、毎日入って来ては部屋中を飛び回ったり、窓枠に止まって室内を観察したりしていたという。そしてとうとう天井とシーリングライトの間に巣作りを始めたため、夫の正さん(71)と相談し、6月上旬、軒に木枠を作ってシーリングライトごと移動させた。

しかし翌朝、戻ってきたツバメに「巣はこっちこっち」と教えても、また室内で巣を作り始め、その健気な姿を見てかわいそうになり、「おなかに赤ちゃんがいるかもしれない。やっぱり部屋に戻してあげよう」と、巣を戻した。

その日から夫婦の日課が増えた。窓は毎朝4時半に開け、夜7時に巣に戻ったのを確認して閉め、雨の日は降り込んでこないよう雨とツバメの様子を確認しながら、こまめに開け閉め。巣の真下にはふん受けを自作し、エアコンは使わず電気もつけず。自然とツバメ中心の生活になっていったそう。

6月下旬、朝起きると「ピーピー」と、か細い声が聞こえた。岡本さんは「ついに生まれたんや」と感動。7月4日には4羽のかわいいひなが巣から顔を出した。「それから、さらににぎやかになりました」とにっこり。2、3分おきに親ツバメが餌をくわえて戻って来ては、順にひなに与える。戻ってくるのが遅いときは、ひなたちと「お母さん遅いなぁ、おなかすいたなぁ」と会話を楽しんでいるという。

孵化から1週間がたち、産毛が少しずつ色づき順調に成長中。一般的に、ひなは孵化から20日前後で飛ぶ練習を始めるという。岡本さんは「とにかく無事にみんな元気に巣立ってほしいです」と願い、夫婦とツバメ一家との和やかな毎日はもうしばらく続きそうだ。

ひなの巣立ちを見守る岡本さん

ひなの巣立ちを見守る岡本さん