持続可能な漁業推進へ 秋山教授が加太で実験中

漁業のまち和歌山県和歌山市加太で、海の天候や潮の流れ、水温、風などのデータを収集し、持続可能で先端技術を生かした「スマート漁業」の推進に役立てるための実証実験が行われている。和歌山大学の秋山演亮教授が取り組んでおり、センサーを搭載したプラスチック製のアヒルの人形(通称・アヒル隊長)が活躍している。

従来は、熟練の漁師が経験に基づく感覚で漁場の状態を把握しながら漁を行ってきたが、データを収集することにより、沖に出航する前から潮目や風向き、水温など、漁場での状況判断に必要な情報を把握することができ、効率化や省力化が図れる。

大手企業が巨大な海洋観測ブイを設置して同様の計測を行う場合もあるが、コストが高いなどの課題がある。アヒル隊長による計測は低価格で実施できるため、地域の企業や団体が継続的に取り組むことが期待できるという。

センサーの動作確認や耐性を調べるため、加太漁協では海表面と水深4㍍、同10㍍の3カ所の水温を同時に計測する装置を5月に設置し、長期運用試験を行っている。実際の漁場である水深100㍍程度の海域でのデータ取得も進める。

魚の食い付き具合などは水温に左右されるといわれ、異なる深さの海水温を同時計測することで、魚の回遊状況の判断に貢献できる。

将来的には、塩分濃度や酸素溶解量など計測するデータを増やすことにより、海洋環境の変化が分かり、漁獲量や操業場所、時期などを適切に判断することに役立つと期待され、資源を守る持続可能な漁業を今後も維持するために、重要なビッグデータを構築することにもつながる。

生活環境の隅々までネットワークにつながり、情報を収集、活用するIoT(モノのインターネット)は、第1次産業である漁業においても重要性を増し、関連する地域産業にも好影響が出ることが期待される。

秋山教授は「地域企業にとっては、IoT設備の販売や設置などをビジネスにしたり、IoTの利用により事業の省力化を実現したり、コスト削減と新規事業への参入が期待できる。また、地域の子どもたちが小さい頃からIoT社会に実際にふれて学ぶことができれば、IoTを生かした将来の地産地消を支えることにもなる」と話す。

今後は、地元の経営者らが集まり、秋山教授の研究室で学習会なども行っていくとしている。

 

センサーを搭載した「アヒル隊長」を手にする秋山教授