リアス式海岸が織りなす雑賀崎
前号では、和歌浦エリアの象徴と題し、雑賀山に鎮座する紀州東照宮と不老橋の歴史を取り上げた。さらに西へ進むと雑賀崎が見えてくる。今週は「奥和歌浦」とも呼ばれる雑賀崎の魅力を紹介したい。
雑賀崎の特徴といえば、高台から海岸まで段々に建つ家々。空から見るとその様子がよく分かる。雑賀崎地区には約570世帯、1160人が暮らす。日当たりの良い南斜面から海を眺められるこの地域には、観光旅館やホテルも存在する。一時期のにぎわいは感じづらくなったが、奇麗な景色と海の幸を求める旅行者に人気だ。昭和25年に毎日新聞社が主催した「新日本観光地百選」の海岸の部で第1位に輝いたとされ、かつてから風光明媚(めいび)な土地として広く知られていたことがうかがえる。
空から印象的に見えるのが番所庭園。雑賀崎の西端に位置し和歌浦湾に突き出た「番所の鼻」と呼ばれる岬にある芝生の庭園で、紀州藩における海上の見張りを行う「番所」が設けられたことがその名の由来。
庭園の先に浮かぶ「大島」「中ノ島」「双子島」も特徴的。荒々しい岩がむき出しとなったリアス式海岸が、海の青と山の緑のコントラストを一層引き立てる。
鷹ノ巣と呼ばれる断崖に建つのは雑賀崎灯台。雑賀衆により築城されたとされる「雑賀城」の跡地であるという。灯台は昭和35年に初点灯。水面からの高さは約75㍍。灯台の頂部近くまで階段で上ることができ、天気が良ければ淡路島や四国を一望できる。
市の中心部から車やバスで容易にアクセスできる雑賀崎。訪れて、魅力を再発見してほしい。
(次田尚弘/和歌山市上空)