地域の文化や教育を支援 大桑財団が贈呈式

公益財団法人大桑教育文化振興財団(大桑弘嗣理事長)の2020年度大桑文化奨励賞に選ばれた和歌山県和歌山市の喜多流能楽師、松井俊介さん(43)、橋本市出身の尺八奏者、辻本好美さん(32)の2人の表彰式と、文化、教育、スポーツ活動に対する援助の目録贈呈式が17日、和歌山市内のホテルで行われた。

同財団は㈱オークワの創業者・大桑勇が1993年に設立。文化・芸術分野で優れた活動に取り組む県ゆかりの人に贈る同賞をはじめ、毎年、大学生や高校スポーツ選手への奨学金給付、市町村対抗ジュニア駅伝競走大会援助、学校への図書寄贈など、文化、教育、スポーツに関する活動への援助を続けている。

式典で大桑理事長は、地域に根差した財団のこれまでの活動を紹介し、「皆さまの声に耳を傾けながら、これからも地域社会に貢献できる活動を続けていく」とあいさつ。本年度の受賞者、援助対象者の取り組みをたたえ、賞状や支援金の目録を手渡した。

援助対象団体を代表し、和歌山市立直川小学校の川端泰子校長が謝辞を述べ、来賓の宮﨑泉県教育長が祝福した。

文化奨励賞の2人は受賞を記念して講話を行った。

松井さんは、能楽師の職種を紹介し、自身は主役を演じる専門職「シテ方」であると説明。同じシテ方である父・彬さんの影響でこの道に進んだこと、内弟子修行などを経てプロとして仕事をするようになったことなどを語った。

能の世界には若い人材が少ない課題があり、文化庁の委託事業で小中学校での講座などに力を入れていると紹介。受賞を受け、「精進しないといけないと思い直すとともに、若い人にアプローチできるような舞台や取り組みに携わっていけたら」と話し、祝いの曲である能「猩々(しょうじょう)」の仕舞を披露した。

辻本さんは、尺八奏者の父・公平さんの影響で尺八を吹き始め、この道を歩んでいることに幸せを感じていることを話し、その思いを込めて童謡「この道」などを演奏した。

尺八は真竹で作られ、表側に四つ、裏側に一つの穴を基本とし、長さに決まりはないことなどを説明。一つの音に魂を込めて演奏する「一音成仏」の考え方などを紹介した。

演奏活動で世界24カ国を巡った中でも「一番かけがえのない場所は、ふるさと和歌山」と語り、受賞には、コロナ禍で活動ができない中、「ふるさとから応援の気持ちを頂いた。少しずつ恩返しできるよう精進していく」と話した。

仕舞を披露する松井俊介さん(左)と尺八を演奏する辻本好美さん

 

謝辞を述べる川端校長(左手前)と援助対象団体の皆さん