胃の電気信号と収縮を同時測定 県立医大
和歌山県立医科大学は26日、胃のペースメーカー電位活動(胃自体が胃に送る電気信号)と胃の収縮運動の同時測定に世界で初めて成功したと発表した。これにより、正常な胃の場合、電気信号と収縮運動がほぼ一致していることが判明。乱れがある場合は病気の可能性があり、原因を特定しにくい機能性胃腸症の診断や解明の他、近年胃との関連が指摘されるパーキンソン病などの早期発見、治療にも道を開くと期待されている。
同大学医学部生理学第1講座の金桶吉起教授と堂西倫弘助教が会見。胃には心臓と同じように一定の周期で電気信号を送るペースメーカー電位の細胞があり、1分間に3回の電気信号を送っている。この電気信号はこれまでも、体の外から電極を当てて検査する「胃電図」の装置で調べることができた。また、従来から胃の収縮・拡張については、連続写真撮影で動画も観測できる「高速MRI」が用いられるが、今回の研究では胃電図と高速MRIの装置を同時に使用できるようセッティング。ことし1月、20代の男女24人の協力を得て電気信号と収縮運動を同時測定したところ、周期がほぼ一致していることが分かった。
仮に周期が一致していない場合は、何らかの病気の可能性もあり、胃カメラなどでは原因が分からないにもかかわらず胃痛や吐き気、膨満感をもよおす機能性胃腸症の診断や病態解明につながるとしている。さらに、近年胃や腸の消化管の機能が脳や全身の病気に関係していることも分かってきており、将来的にパーキンソン病やうつ病など脳の病気の早期発見や治療、症状改善につながる可能性があるという。
金桶教授は「胃の電気信号と収縮運動を同時測定するために高速MRIの装置を少し改造する必要があるが、やろうと思えばすぐできる。機能性胃腸症の診断などは健康診断でも即、臨床応用が可能」と話している。