コロナワクチン接種へ 医療従事者や高齢者優先

新型コロナウイルスのワクチン接種に向けて各自治体が準備を進めている。国の方針に沿って2月下旬には医療従事者に、3月下旬には65歳以上の高齢者への優先的な接種を始める予定。和歌山市が21日、健康局に「新型コロナワクチン接種調整課」を新設するのをはじめ、本紙エリア5市町でも、接種券(クーポン)の発送準備、医療機関や医師会との接種場所の調整などを急いでいる。

政府はワクチンを「感染対策の決め手」と位置付け、全国民が2回ずつ無料接種できるよう、欧米の製薬会社3社と計2億9000万回分の供給を受ける契約を結んでいる。このうちアメリカの製薬大手ファイザー社のワクチンは唯一、国に承認申請を出しており、国内のワクチン接種は同社製のものから始まるとみられている。

菅義偉首相は18日の施政方針演説で、2月下旬の接種開始に改めて意欲を示した。政府は、医療従事者、高齢者の後、基礎疾患のある人などに優先して接種するとしている。

医療従事者への接種準備は県が進め、住民への接種準備は市町村が担う。ファイザー社のワクチンはマイナス75度程度での保管が必要なため、国が冷凍設備を用意する予定で、市町村は設置場所の確保なども行う。

和市は新課設置 3月中旬に発送

和歌山市の優先接種対象の高齢者は約11万人。3月中旬にまず高齢者にクーポンを発送し、その他の人には4月以降に順次、発送する。接種は市内の医療機関で行う予定で、協力を得られるかどうか意向調査を進めている。感染リスクを考慮し、集団接種はしない方針。

市はこうしたワクチン関連業務のため、新型コロナワクチン接種調整課を新設。課長、班長ら正規職員5人と会計年度任用職員数人の体制となる。

同課は市保健所2階に設けられ、業務開始を前に19日、尾花正啓市長と佐伯正季健康局長が看板を設置した。

尾花市長は「全市民の接種へ、できるだけスピードを速めていきたい」と述べた上で、マスクの着用や手指の消毒、換気、感染拡大地域への不要不急の外出を控えるなどの基本的な感染予防を徹底することが重要だとし、改めて市民に呼び掛けた。

接種場所の調整 密防止へ検討も

本紙エリアの他の4市町では、優先接種の高齢者は紀の川市約2万1000人、岩出市約1万3200人、海南市約1万8000人、紀美野町約4000人で、いずれもクーポンを郵送して接種を通知する。

接種場所については、紀の川・岩出両市が那賀医師会と、海南市が市医師会と調整中。新型コロナワクチンは、インフルエンザのワクチンに比べアレルギー反応のアナフィラキシーショックが多いとの見方もあることから、紀の川市は、接種後に安静にしてもらう場所の確保、密にならない対策も検討している。

紀美野町も町内の医療機関に接種を依頼するが、迅速な接種のために集団接種の実施も選択肢とし、感染リスクとの兼ね合いを含め検討を進めている。

各市町とも、国の方針に沿って3月下旬をめどに高齢者への接種を始められるよう準備しており、紀の川市と紀美野町は3月上旬、海南市は中旬にクーポンを発送する予定。

「新型コロナワクチン接種調整課」の看板を設置する尾花市長㊨と佐伯局長

「新型コロナワクチン接種調整課」の看板を設置する尾花市長㊨と佐伯局長