高齢患者も手術可能 日赤で心臓カテーテル

日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山県和歌山市小松原通、平岡眞寛院長)で、開胸せずカテーテルで人工弁を心臓内に留置するTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)の治療が開始された。加齢によって増加する大動脈弁狭窄症患者への低侵襲治療が大きく前進した。

同症は、心臓の内部にある心臓弁の中でも血液を全身に送り出す大動脈弁が、加齢などで硬くなり開きが悪くなることで、ポンプとしての心臓の役割が増大し負担がかかり発症する。息切れや動悸、胸痛、失神などの症状があるが、高齢者は重症化するまで自覚しないことが多いという。

現在の治療法は、薬剤を使う保存的治療、開胸手術、TAVIの3種類。進行性の病気のため、症状によっては開胸手術かTAVIが必要となる。開胸手術の場合、人工心肺装置によって心臓を止めて手術するため、高齢者に実施するのが難しく、課題となっていた。

一方、TAVIは、開胸したり心臓を止めたりすることなく、太ももの付け根にある太い血管からカテーテルを挿入し、人工弁を心臓まで運んで留置するため、傷口は小さく体への負担が少ない。また、入院期間は約10日~2週間で、健康保険の適用対象となる。

同センターではこれまでに3例実施し、循環器内科部副部長の豊福守医師(54)は「日常生活もままならない患者さんが、TAVIを受け、退院時には顔色も良く歩いて帰れるほどで、日常生活を取り戻せる。必要とされる医療が提供できるようになった。今後も院内外の連携を取り、新しい治療を提供できるように努めたい」と話している。

TAVIは同センターで昨年新設されたハイブリッド手術室で行われ、今後は救急にも対応できる体制を目指したいと意気込んでいる。

 

経カテーテルを手に豊福医師