さいとうたかをさんら受賞 県文化表彰決まる
和歌山県の文化向上や発展に貢献した人に贈られる平成29年度県文化表彰の受賞者が決まった。「文化賞」は、和歌山市出身の劇画家・さいとう・たかを(本名 齊藤隆夫)さん(81)=東京都=、「文化功労賞」は古座川町出身の音楽家・杉原治さん(83)、田辺市の生物研究者・玉井済夫さん(79)、「文化奨励賞」は和歌山市出身の化学者・金子達雄さん(46)、チェリストの谷口賢記さん(39)=東京都=、串本町の「河内祭(こうちまつり)」の維持保存に努める古座川河内保存会に贈られる。
昭和39年度から実施している表彰で、本年度で54回目。表彰式は19日午後2時から県庁正庁で行われ、受賞者には表彰状とメダル、副賞が贈られる。受賞者の主な経歴と功績は次の通り。
【さいとう・たかをさん】
西和佐村(現和歌山市)に生まれ、大阪市や福泉町(現堺市)で育った。17歳から約2年かけて描いた「空気男爵」で昭和30年にデビュー。写実的な「劇画」というジャンルを定着させた。43年11月に連載がスタートした「ゴルゴ13」はスナイパー(狙撃手)の活躍を描いた作品で、幅広い世代に愛されている。ことし連載50周年。現在まで一度も休載せずに続き、コミック界の連載最長記録を更新し続けている。
【杉原治さん】
和歌山大学学芸学部で声楽を学び、卒業後は県立高校の音楽科教諭、県立高校の校長などを歴任。赴任先では合唱部の指導にあたった。昭和35年から和歌山市民合唱団の指揮者に。合唱組曲「紀州路」などの大曲、ふるさと和歌山にちなんだ歌など、数多くの合唱を指揮。下津女子高校合唱部や男声合唱団ほえーるなどの指揮を務め、長年合唱活動を通して音楽文化の向上と振興に尽力してきた。
【玉井済夫さん】
東京教育大学理学部大学院修士課程修了後、高校の理科教諭や県立高校の校長を歴任。専門は、は虫類や両生類で紀伊半島に生息するサンショウウオの実態を解明。「天神崎の自然を大切にする会」の中心的な役割を担い、日本ナショナル・トラスト協会の専務理事としても活躍。絶滅の恐れのある野生動植物などを掲載した県のレッドデータブックの作成にも携わり、長年生物の調査や研究、自然環境保全に尽力してきた。
【金子達雄さん】
東京工業大学大学院博士前期課程理工学研究科有機材料工学専攻を修了。高分子化学、特に高性能バイオプラスチックに関する研究に取り組む。遺伝子組み換え微生物を用いて生産されるシナモン類を原料としたバイオプラスチックの合成に成功。これを使った世界最高強度の透明樹脂を開発した。将来的には自動車などの輸送機器の軽量化や産業廃棄物の削減などの展開にもつながり、今後も一層の活躍が期待される。
【谷口賢記さん】
有田川町出身の分子免疫学者・維紹さんを父に持ち、スイスで誕生。18歳でチェロを始め、京都大学大学院理学研究科修士課程を修了。京都大学交響楽団では首席チェロ奏者、学生指揮者として活躍。ボストン音楽院に留学し、チェロ演奏で音楽修士号を取得。仲間と「スタイナート・トリオ(現スタイナート)」を結成し、県内でも公演。和歌山市出身の澤和樹氏(東京藝術大学学長)ら著名な演奏家と共演を重ね、和歌山との文化交流に努めている。
【古座川河内祭保存会】
古座川の川中にある「河内島(こおったま)」をご神体として祭祀を行う、熊野の自然崇拝を基調とする祭礼。鯨舟を祭礼船に仕立てた御舟(みふね)が河内島を巡り、櫂伝馬競漕や獅子舞奉納なども行われる。昭和40年に県指定無形民俗文化財、平成11年には「河内祭の御舟行事」として国の重要無形民俗文化財に指定。平成28年に日本遺産に認定された、「鯨とともに生きる」の中核構成文化財としても注目されている。