お米の「やすい」 広原へ本社移転

品質向上、効率化へ

商品を自動で積み上げるロボット「パレタイザ」

「いつ食べても新米のように美味しい」をテーマに、安心・安全で安定した高品質な米を和歌山市和歌浦中で販売してきた㈱やすい(保井元吾代表取締役)は12日、同市広原に本社事務所と精米プラント(工場)を含む本社機能全てを移転する。協働ロボットの導入で生産性を高める他、全ての機器設備を新調。さらなる品質の向上、業務の効率化を図る。

和歌浦から広原に

新社屋は2022年11月10日に着工。敷地面積は約1120坪で、全5区画の精米プラントと2階建ての本社事務所を設ける。

精米プラントには、自動で商品をパレット(荷役台)に積み上げるロボット「パレタイザ」と3・3㌧の玄米が入る米びつタンク60基を新たに設置する。ロボットは、ラインに流れる袋詰めされた商品をアームでつかみ、積み上げていく。これまで人力で行っていた重労働を自動化することで効率化を図る。

荷受けした玄米はわらや木くずを取り除いた後、米びつタンクに保管される。従来は150㌧の低温倉庫で保管していたが、タンクの設置により約200㌧の保管が可能に。さらにコンピューターで指示を与えることで、タンクから精米ラインに自動で玄米を投入することができる。

玄米の受け入れや出荷時の積み込み作業を行う荷捌き場も拡大。13㌧トラック2台や20㌧トレーラーを収容でき、広い空間で作業することができる。その他、プラント内全ての機械を新調し、各機械の精度も向上した。

(左から)TOYO ECOパッカー 全自動計量包装機、TOYO ロスナイ精米機(75馬力)1時間4.5㌧精米能力、荷捌き場(大型13~20㌧車2台収容)

保井代表取締役(58)は「新たな精米プラントにより、さらに品質にこだわることができる。幅広くいろんな人に食べて喜んでもらいたい」と話す。

本社事務所は2階建て。新たに休憩スペースを設けるなど、社員への福利厚生も充実させている。

徹底的に異物を除去 安心、安全へ意識高く

保井伸介専務取締役(49)は「安心、安全の意識を高く、異物に対する選別を徹底している」と話し、精米プラント内のさまざまな選別機で異物の除去を強化している。

荷受けした玄米は、粗選機を通して米びつタンクに蓄えられる。玄米をブレンドしてかき混ぜた後には、石抜き機で石を取り除いてから精米する。精米後は「シフター」で砕米を除去し、色彩選別機で黒い斑点のある米やプラスチック、ガラスなどを排除。最後に金属選別機で金属類を取り除く。衛生管理を徹底し、味だけでなく安心・安全面でも高い信頼を得ている。

最高の味にブレンド

同社は全国から玄米を仕入れ、試食で味を確認の上、測定機器による科学的検証を経て精米し、ブレンドしたものを出荷している。保井代表取締役は「品質本位で米を販売している」と話し、1年に1回しか収穫できない米の質を年間通して高水準で安定させるため、品種の特徴を見極めたブレンドにこだわる。

毎日10㌧以上の玄米を仕入れ、約10~15㌧の精米を出荷。本社事務所では5種類を小売りし、㈱松源には3種のプライベートブランド米「極上松源ひかり」「特選松源ひかり」「松源こまち」を卸している。すしや丼など、あらゆる用途に合わせた販売も行う。

保井代表取締役は、天台宗の開祖、最澄の教え「悪をなすな、善をなせ、人の為になせ。」を座右の銘に商売に着手。安心・安全、おいしい米の提供と研究、日本の米の素晴らしさを広めることを大切にしている。

新設備を紹介する保井専務取締役

休耕田を減らしたい 地域貢献へ思い新た

保井代表取締役は「地域への貢献を約束する」と強く話す。JAや米穀卸との長年の関わりを通して得た米作りに関する豊富な知識を生かし、地域の農業の発展に寄与する。

休耕田を減らしたいと、広原や安原など本社周辺地域の農家から米の購入を計画。後継者に悩む農家へのサポートも検討している。

おひさまマークのお米

代表取締役 保井元吾

弊社は和歌の聖地、和歌浦で江戸中期に両替商として創業、幕末には米萬商として商いをつないできました。明治、大正期には米騒動で一時中断しましたが、戦後も米の商いを続け、昭和41年に㈲保井米穀店として登録。平成6年に㈱やすいを設立しました。

株式会社設立と同時に当時最先端の精米プラントを配備し、小売販売はもちろん、大型量販店をはじめ、病院、給食、飲食店などへの業務拡大を図りました。

おひさまの光を十分に浴び、年に一度だけ収穫される米。その米、日本の主食を扱う企業として、こだわりを持って妥協することなく製品づくりに取り組んできました。

弊社の特徴として、特に仕入れ部門は生産地JAをはじめ有力米穀卸とのつながりと信頼関係を大切にし、全国の産地に足を運び、作況状況を互いに確認し合って仕入玄米を確定します。また精米部門に関しても長年培った独自の精米、ブレンド技術により、他社にはまねできない、年間通して安定した品質の米を提供しております。その代表が㈱松源プライベートブランド米です。

常に高品質を維持するために必須とされるのは、卓越した仕入れシステムと工場、精米プラント環境によるところが大きいです。この度移転に際し、本社、工場、プラントの各機械にもこだわることができ、さらなる㈱やすいの品質探究が行えます。

この環境を確固たる形にしていただいた㈱西村組はじめ関連会社、東洋ライス㈱、業務関係の皆さま方には大変感謝いたします。また、新天地の広原は優良米の生産地でもあり、専門家として地元にしっかりと貢献することをお約束いたします。

最後に、なお一層お客様に喜んでいただけるよう、米のスペシャリストとして社員一丸となり精進してまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。