検診と読影に不一致 がんデータ4万件照合

がん検診の精度向上に向け、県が管理するがん登録データと市町村が管理する検診データを照合する追跡調査のモデル事業が2017年度、和歌山市を対象に実施された。検診結果の判定と実際の読影結果や細胞診判定結果の不一致があり、検診で「要精密検査」とされなかったが、2年以内にがんが発見されたケースが66件あった。

和歌山県庁で事業報告についての記者会見が開かれ、県や市、厚生労働省研究班が成果を発表した。

がんによる死亡率減少を図るため、がん検診の質の向上を目的に実施。照合には12年度の約4万件のがん検診データと09年1月から14年12月までの6年間で、がんと診断された人が登録する県のがん登録データを用いた。情報収集分析などの委託先である県立医科大学と共同実施体制を構築し、データ分析は研究班が支援した。

検診結果の判定と実際の読影結果や細胞診判定結果の不一致が見つかったことは「大きな問題」と指摘。肺がんの場合、読影結果が「がんの疑い」であるにもかかわらず要精検や要治療ではないものが58例、読影結果が「がんの疑い」以外なのに要精検や要治療だったものが50例あった。事業報告書では「二重読影の仕組みを再整備する必要がある」などとしている。

検診で要精検とされなかったが、2年以内にがんが見つかった66件のうち、ほとんどは初期症状だったが、最も中間期がんに近いと考えられる症例が肺がんで9例、乳がんで2例、大腸がんで1例あった。これらの12例には、検診では発見されにくい症例も含まれていた。

今回の追跡調査結果を踏まえ、県は「がん検診の質を評価する手段としての仕組みができた。制度管理の指導や症例検討に関する研修を行い、質の向上に取り組む」と話した。市は「詳細な検診の精度管理評価が可能となったことは大きな効果」、研究班は「検診の質の向上に資する成果。全国の先進モデルとしての完成を強く期待する」としている。

事業報告を行う県、市の担当者ら

事業報告を行う県、市の担当者ら