再生医療の推進に全力 iPS細胞研究への支援を

 10月8日、 今年のノーベル医学賞・生理学の受賞者は、 京都大学の山中伸弥教授に決定した。 受賞の理由は、 マウスの成熟した細胞を未成熟な幹細胞(さまざまな細胞に変わる能力をもつ万能細胞)へと初期化する方法を発見したことによる。

 私たちの体を構成している細胞数は約60兆個といわれているが、 これらは、 1個の受精卵から作られる。 受精卵は約50回細胞分裂を繰り返し、 神経、 皮膚、 筋肉、 骨、 臓器などの体の組織になる。 いったん役割を与えられた細胞は、 その後、 他の細胞にはなれないと考えられていた。

 しかし、 そのことを疑った研究者がいた。 イギリスのジョン・ガードン博士だ。 今から50年前、 カエルの卵から核を抜き出し、 代わりにオタマジャクシの細胞から取り出した核を細工して入れた。 すると、 その卵から、 正常なオタマジャクシが誕生したのだ。 成熟した細胞を未成熟細胞へと初期化する道を開いたのである。

 しかし、 この発見をヒトに適用するには、 倫理的に大きな問題があった。 それは、 この方法ではヒトの受精卵を壊すことになるからである。 山中教授は、 受精卵を使わず、 ヒトの細胞から万能細胞を作ることを目指した。
 2006年、ついにマウスの成熟した細胞に4つの遺伝子を入れるだけで未成熟な幹細胞を作り出し、これをiPS細胞(人工多能性幹細胞)と名付けた。 翌年11月にはヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに成功した。

 ノーベル賞受賞発表直後の10月18日、 公明党の再生医療推進プロジェクトチームの会合に、 山中教授が、 臍帯血支援の会の有田美智世理事長とともに出席された。 山中教授は、 「患者への迅速な治療を実施できるようにiPS細胞ストック計画を実現したい。 また、 公明党の尽力で成立した 『造血幹細胞移植推進法』 のお陰で臍帯血移植の道は開けたが、 臍帯血をiPS細胞の研究に利用できるよう協力してほしい」 等々、 要望された。

 公明党の山口代表は、 新たな資金の重点的な投入など、 政府は最大限に支援すべきと応え、 再生医療基本法の制定に意欲を示した。

 11月1日の衆院本会議代表質問でも、 わが党の井上幹事長だけが 「再生医療の推進」 に触れ、 山中教授からの要望について、 国をあげた支援を総理に求めた。

 山中教授はノーベル賞受賞会見で 「日の丸の支援がなければ、 こんな賞は受賞できなかった」 と述べられたが、 自公政権下では、 科学技術予算の拡充に取り組み、 山中教授にもiPS細胞の発見前から国の財政支援が行われてきた。

 09年度補正予算では、 最先端の研究30件に総額2700億円の支援を行うこととなっていた。一件当たり平均約90億円、最大では150億円の資金提供となる予定であった。 しかし、 その直後、 民主党政権が誕生。 補正予算の執行見直しが行われ、 iPS細胞研究への支援は50億円と縮小してしまった。

 山中教授の研究は、 iPS細胞から、 神経細胞や心筋細胞などを作製し、 パーキンソン病、 脊髄損傷、 眼疾患、 心臓疾患など多くの病気の治療に朗報をもたらす再生医療の実現をはじめ、 今後の医療・創薬に画期的な進展が期待される。

 公明党は、 iPS細胞を中心とする再生医療の推進に全力で取り組んでいきたい。