文化財をいかに守るか 和歌山県立博物館で企画展

 近年多発した盗難や自然災害で被害を受けた文化財を多数展示し、文化財をどう守りどう未来に引き継いでいくかを問い掛ける企画展「文化財受難の時代いかに守るか」が4月21日まで、和歌山市吹上の県立博物館で開かれている。同館の大河内智之学芸員(38)は「文化財を失うことは、地域の歴史を失うこと。今何をすべきかを考える機会にしたい」と話している。

 展示されているのは、折り取られ一時行方不明になっていた牛馬童子の頭部や、半数が盗まれ6体だけになった重要文化財「十二神将立像」、盗まれた際に外れて堂内に落ちていた不動明王像の左脚部など。

 また、2~3年前に県内60カ所で160点以上が盗まれ、犯人逮捕により一部が見つかったものの所有者が不明の文化財24件43点も紹介されている。大河内学芸員は「不思議に思われるかもしれませんが、記録や写真がないと確認できないのです」と話す。

 だが、平安時代の貴重な阿弥陀如来坐像の台座の内側には銘文があり、奉納者名や地名「東谷垣内」が彫られたもある。右腕がない像、光背がない像などは、右腕や光背が残っていれば所蔵者と判明するという。

 大河内学芸員は「これらの文化財に見覚えはありませんか? 小さな手掛かりに心当たりはありませんか? 本来の所蔵者に返したいので、ぜひ教えてください」と呼び掛けている。

 また、無人のお堂の貴重な像を同館で預かって守ると同時に、地域の人々の信仰の場を維持するため、県立工業高校産業デザイン科生徒が制作したレプリカの像をお堂に安置する試みも紹介されている。

 20日は博物館講座「過去からの警鐘に学び、災害から文化財を守る」(前田正明同館主任学芸員)、4月7日は同「文化財受難の時代いかに守るか」(大河内学芸員)がある。どちらも午後1時半から近代美術館2階ホールで。

 ミュージアム・トーク(展示解説)は24、30日、4月13、21日の午後1時半から。

 問い合わせは同館(℡073・436・8670)。