伊太祈曽駅検査場など 国の文化財に

 国の文化審議会(宮田亮平会長)は15日、全国で220件の建造物を登録有形文化財に指定するよう文部科学大臣に答申した。県内からは、和歌山電鐵貴志川線の伊太祈曽駅検査場など5件、豊島家住宅(橋本市)、東光寺(北山村)本堂と山門の計8件が指定される見通しとなった。これにより、県内の登録有形文化財(建造物)は65カ所、176件となる。

 このうち、本紙エリアで登録される和歌山電鐵貴志川線の建物は、検査場の他、伊太祈曽駅プラットホーム及び上屋、大池(おいけ)第二橋梁、西第二橋梁(いずれも和歌山市)、大池第一橋梁(同市・紀の川市)。

 同線は、和歌山駅から紀の川市貴志駅まで14・3㌔を結ぶ鉄道。大正5年に和歌山市大橋―山東(現伊太祈曽)間で「山東軽便鉄道」として開通。今回登録される建造物は、沿線の近代史を物語る重要な土木遺産で、保存状態も比較的良好で歴史的価値が高いという。

 伊太祈曽駅検査場は木造平屋建て。大正5年の開業時に完成した中央部、後に増築された南側の片流屋根の側廊部からなる。中央部の屋根は、三角形構造の木造トラスで支えられている。特に凝った意匠は見られないが、整然と並んだ28連の木造トラスの内部空間は壮観。

 伊太祈曽駅プラットホームと上屋は、開業当時からの石積みホームの姿を残している。ホーム上には昭和戦前期までに造られた中古レールを骨組みとした上屋が残る。

 大池第一・第二橋梁は、大池遊園の大池に架かる同線の代表的な橋梁。第一橋梁(和歌山駅側)は36㍍、第二橋梁は同社最長の51㍍。

 西第二橋梁は、交通センター前駅に隣接する農業用水路に架かる長さ14㍍の桁橋で、英国製鋼材の桁が使われている。

 登録を受け、同社広報では「存続が危ぶまれた7年前に廃止になっていたら、なくなってしまっていたかもしれないもので、ありがたいこと。3年後に開業100年を控えながら、資金面の問題は依然大きい。今回の文化財登録を誇りに、地域や市民の皆さんにご協力いただきながら維持保存していければ」と話している。