山、川、海の景観を守る 「吉野熊野国立公園」
これまで、瀬戸内海国立公園の指定80周年について紹介してきたが、和歌山県には国立公園がもうひとつある。「吉野熊野国立公園」だ。
吉野熊野国立公園は三重県、奈良県、和歌山県にまたがり、紀伊半島の中央に位置する山々と川、海岸で構成され、昭和11年2月1日に指定。今年が78周年にあたる。
桜で有名な吉野山、大峯山、大台ケ原、熊野三山などが有名で、平成16年に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録されたことから、広く注目されるようになった。
和歌山県内では田辺市、新宮市、那智勝浦町、太地町、北山村、串本町がそのエリアとなる。大峯山脈や大台ケ原から続く熊野川(北山川下流域)に位置する景勝地「瀞峡」、熊野三山に位置する「那智の滝(一の滝)」、黒潮の暖流が育む南紀特有の自然景観を味わえる「宇久井半島」、国の名勝天然記念物に指定されている「橋杭岩」、熱帯性の生物が生息し2005年にラムサール条約に登録された「串本海域公園」が代表的だ。
「串本海域公園」は昭和45年、日本で最初に指定された海域公園。指定当初は「海中公園地区」の名称であったが、藻場やサンゴ礁などの海中の景観に加え、海中と一体的な海域環境をつくる干潟や岩礁域などを守ることを目的に平成22年4月に制度が改定されている。
和歌山県が誇る、山、川、海の歴史的価値を自然景観の観点から保護しようと、78年前に指定された吉野熊野国立公園は、世界遺産登録の先駆けと言っても過言ではない。吉野熊野国立公園の魅力にクローズアップしたい。(次田尚弘/和歌山)