天石東村を顕彰 県書道資料館が25周年

 和歌山市西汀丁の県書道資料館(天石東村記念ホール)が、ことしで25周年を迎える。同館は同市に生まれ、書道教育の発展に尽くした書道家・天石東村(あまいし・とうそん、1913~89)の功績を伝え、書写書道教育の発展を願いオープン。書作品や資料の展示だけでなく、さまざまな文化発信拠点として、広く市民に親しまれている。

 天石は昭和23年に県書道教育連盟を結成。県の書道教育を全国屈指の水準に引き上げるとともに、小中高生の書道教科書を執筆し書道教育に尽力。日展審査員などを務め、書道界で確たる地位を築いた。

 同館は平成3年11月に開館。天石書作品約300点の他、天石が所有していた中国明清代の著名な書画や文房四宝など約500点を収蔵。

 3階建てで、2階は各種企画展や会議などに対応できる多目的ホール、3階が天石作品を展示する記念ホールとなっている。2階ホールは舞台や照明、音響設備も完備。グランドピアノを備え、杉谷昭子さんや宮下直子さんの演奏会を開いたこともある。

 県内を中心に、幼稚園児や小中高生らから募る書写書道作品展は、昨年で21回を数え、例年6000点ほどの作品が寄せられている。

 天石の長女の夫で、現在理事長を務める貴志孝生さん(72)は「子どもの数も少なくなる中、書道の裾野を広げるため、もう少し県外にも書道展の良さを広げたい」と話す。

 25年の節目を迎え「有数の書家に慕われた天石が亡くなって28年。時代の流れで、世の中の人が天石流の字から離れつつあることに寂しさも感じますが、優しく親しみのある字だと言ってくださる方も多い。天石の遺志を継ぎ、地域の文化発展に寄与できれば」と話している。

 開館25周年を記念し、6月30日まで特別展を開催。明末清初の傑出した書家の一人、王鐸(おうたく)や、天石の作品の計22点を紹介している。

 王鐸の3作品が同時に展示されるのは開館以来25年ぶり。1630年、39歳の頃に書いた、力強く野趣に富んだ3・9㍍の長条幅の他、天石の壮年期から晩年にかけての軸、額作品を展示している。

 日曜、祝日は休み。3階の観覧は大人300円、小・中学生200円。問い合わせは同館(℡073・433・7272)。

天石東村記念ホールで貴志孝生理事長

天石東村記念ホールで貴志孝生理事長