宇佐美圭司「絵画のロゴス」近代美術館で
幼少期を和歌山市で過ごした画家・宇佐美圭司(1940―2012)の回顧展「絵画のロゴス」が17日まで、和歌山市吹上の県立近代美術館で開かれている。人体を記号化した前衛的な作品で知られ、同館の奥村泰彦学芸員(52)は「世界の構成を語り直し、論理や構造を描こうとした画家。とにかく大きくてすごい絵に、巻き込まれるような感覚を楽しんでほしい」と話している。
同館で回顧展を開くのは3度目。平成24年に亡くなってから、その画業を見直す関西では初の展覧会。大作を中心に、10代で描いたデッサンを含め61点を紹介している。
宇佐美は大阪府吹田市生まれで、12歳までを和歌山市で過ごした。中之島小、伏虎中で学び、和歌山大空襲も経験している。
独学で絵画制作を始め、23歳で、当時現代美術を扱うパイオニア的存在だった東京の南画廊で鮮烈にデビュー。奥村学芸員は「アメリカの抽象表現をそしゃくし、独自の解釈を加えて画面をつくり上げ、当初からトップレベルだった」と話す。
昭和40年の『ライフ』誌に掲載されたワッツ地区の黒人暴動の写真に衝撃を受け、走る、かがむなど、4つの人型を円に内接させて描くようになる。
円弧と人型が循環するように反復して描かれ、人類の誕生から未来への時間の流れや、壮大な宇宙を感じさせる。平成22年に同館で開かれた回顧展で滞在制作した「山々は難破した船に似てNo・2」も並ぶ。
「芸術の仕事は『世界の把握』。宇佐美さんは、存在することに対して、絵画はどう応えられるかを追究していた。世界をつくる原理のようなものを可視化しようとした」と奥村学芸員。進行したがんが見つかってからも精力的に描き続け、300号の正方形の作品「遺作・制動(ブレーキ)・大洪水」が最後となった。「この先、表現がどう変化していくのか見たかったので惜しまれます。色覚に優れた方だったので、微妙な色合いの使い方にも注目して鑑賞してもらいたいですね」と話している。
2日、17日午後2時から、フロアレクチャー(学芸員による展示解説)がある。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。