盗難防ぐ仏頭レプリカ 和工生が製作・奉納

文化財の盗難防止に向け、県立和歌山工業高校(田村光穂校長)の生徒たちが3Dプリンターを使い、紀の川市横谷地区の茶所に安置されていた平安時代後期作の仏頭のレプリカを製作。25日に同所に奉納した。

茶所は粉河方面から紀の川を渡り、高野山に至る麻生津道(西国街道)の途中にあり、江戸時代は高野山に参詣する人々の休憩所としてにぎわいを見せた。近年は地区の人口が減少し、管理が難しくなってきたことから、昨年の秋、県立博物館を通じて同校へ複製の製作を要請。同校産業デザイン科の3年生7人が課題研究の授業で製作に取り組んだ。

仏頭の高さは約30㌢。合成樹脂製で、螺髪(らほつ)なども精巧に再現されている。

奉納には同校の生徒や地域住民など、約20人が参加。平成22年度から同校と協力して文化財の複製に取り組む県立博物館の苗代吉登副館長(57)が「目の不自由な方など、さまざまな方に親しんでほしい。貴重な文化財を守り後世に伝える和歌山方式として、取り組みを進めていく」とあいさつ。

横谷自治区長の中嶋康彦さん(64)は「人口が減る中、仏頭を火事や盗難の被害からどう守るかが課題だった。そっくりの姿に複製していただき、本当にありがたい」と感謝した。

苗代副館長によると、同22年から23年にかけ文化財の盗難が相次いだことをきっかけに取り組みを始めたという。

同校3年の岡本日花里さん(18)は「3Dプリンターを使った作品の製作は初めてで、仏頭の欠けている部分を復元するのが大変でした。複製の製作を通じて本物の仏頭を守れてうれしいです」と話していた。

中嶋自治区長㊧に複製を手渡す生徒たち

中嶋自治区長㊧に複製を手渡す生徒たち