がん免疫療法確立へ国内初治験 県立医大
県立医科大学(岡村吉隆学長)は7日、発見が難しく治療が手遅れになることが多い膵臓がんなどの効果的な治療法として、体内の免疫を活用してがん細胞を攻撃する「樹状細胞療法」を開発し、国内初の治験に着手すると発表した。開発の中心者である同大外科学第2講座の山上裕機教授は「長期間にわたりがんをコントロールできるのが特徴。早期の提供に向け取り組みを進めていきたい」と話している。
同大で開かれた記者会見には、山上教授やがん患者団体「市民のためのがんペプチドワクチンの会」の會田昭一郎代表、協力企業のテラファーマ(東京都)の関係者らが出席し、治療法の特徴や開発の経緯などについて説明した。
国内の膵臓がんによる死者は年間約3万1000人で、肺がん、胃がん、結腸がんに次ぎ4番目に多い。最近の25年でがん全体の発生率、死亡率はそれぞれ1・3倍、0・96倍に変化しているのに対し、膵臓がんはいずれも1・5倍に増加している。発見時にはすでに進行し、切除不能であるケースが3分の2を占めることから、効果的な治療法の開発が急務とされている。
「標準療法不応の進行膵癌患者を対象とした樹状細胞免疫療法」として治験が行われる。同療法は薬剤や放射線などをがん細胞に作用させる従来の療法と異なり、人体の免疫細胞をがん細胞に作用させるのが特徴。体内の免疫を活用してがん細胞を攻撃するため、従来の療法に比べて副作用が出にくいという。
同大とテラファーマは同日、治療薬としての樹状細胞ワクチンの開発、実用化に向けた協力を進めることなどに関する契約を締結した。
樹状細胞療法は1973年に米国ロックフェラー大学のスタインマン教授らが発見したもの。スタインマン教授は2007年に膵臓がんと診断されたが、この療法により、通常では考えられない4年間の延命に成功したという。スタインマン教授は同療法により、2011年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
山上教授らによると、県立医大などによる治験は、来年3月に被験者登録を開始し、2022年ごろの実用化を目指すとしている。
山上教授は「この療法により、がんの進行を止めることができる。早くリーズナブルな価格で患者に提供できるようにしたい」と意気込みを語り、會田代表は「これまでの限界を克服する治療法であり、大きな成果。ぜひ計画通りの成果が出るよう期待している」と話した。