統合前に思い出を 伏虎4小中に見学相次ぐ

 「母校がなくなる前に、懐かしの校舎をこの目で」――。和歌山市の伏虎中学校区の4校が小中一貫校に統合されるのに伴い、この春に閉校となる各校で、卒業生が同窓会の開催に校舎見学を盛り込む事例が相次いでいる。いよいよ迫った閉校を前に、消えゆく母校の思い出をしっかりと胸に刻みたい、そんな思いが卒業生たちを学びやに向かわせている。

 新年早々の3日、本町小学校の校庭には、にぎやかな歓声が響いた。

 訪れたのは昭和55年の卒業生約60人。同窓会代表幹事の根来昌生さん(48)は「校内の様子が、当時とあまり変わっていないのがうれしい」と笑顔を見せた。

 卒業以来、実に36年ぶりの再会を母校で果たした。これまで同窓会を開いたことはなかったが、「小学校がなくなってしまう。これが最後のチャンスかもしれない」という思いに強く背中を押されたという。同窓生は少年や少女に戻って、校庭でゴム跳びやキックボールを楽しみ、体育館でラジオ体操。幼い日の記憶をたどりながら、当時を懐かしんだ。

 窓からの景色を眺めながら、根来さんは「(商業施設の)ニチイがあった場所がパチンコ店になり、景色が変わってしまったのは少し寂しいですね」と話した。

 このような“校内見学ツアー”の要望が各学校に寄せられるようになったのは、1年ほど前から。校区の城北、本町、雄湊の3小学校と伏虎中学校の統合が決まってからは、閉校を惜しむ大勢の卒業生が個人で各学校を訪れる中、学校の了解を得て団体で校内を見学した後、同窓会へ向かう例が目立つ。

 雄湊小学校ではこれまでに2件あり、来月にかけても2件を予定。伏虎中学校では昨年度から盆や年明けを中心に、すでに十数件。春までにも数件の予定が入っているという。

 また、8日に伏虎中学校を訪れたのは、昭和53年卒業生。「伏虎中学校で、最後の『終わりの会』をしよう」との呼び掛けに、約100人が集合。校内の様子を写真や動画に収めた他、同中学校の林素秀校長からこれまでの学校の歩みや、新たに開校する伏虎義務教育学校について説明を受けた。

 「ここから見る和歌山城は最高やったなぁ」。生まれ変わろうとしている校舎を回る同窓生たちから、そんな声も聞かれ、教室の椅子に座って思い出に浸る同窓生もいた。

 今は和歌山を離れて暮らす同窓生の中には、同窓会の開催をきっかけに学校がなくなることを知った人も。神奈川県から参加した浜田紫乃さん(53)は「校内を回って、青春時代の懐かしい記憶がよみがえりました。寂しい思いもありますが、中学校がなくなっても思い出は深く胸に刻まれています」と感概深げだった。

 伏虎中学校では3月14日に生徒会が中心となった閉校集会を開き、卒業生や地域住民が来校できる機会にするという。

体育館に集合(伏虎中学校昭和53年卒生)

体育館に集合(伏虎中学校昭和53年卒生)