性的少数者の人権課題 県講演会で日高氏ら
職場における人権尊重意識の向上を目指し、県主催のシンポジウム「企業における人権」が16日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、行政や企業の関係者ら約70人が参加し、セクシャルマイノリティー(性的少数者)の支援や、人権に関わる情報セキュリティーの問題などについて耳を傾けた。
前半は、宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が「セクシャルマイノリティの人権課題と支援のあり方」と題して講演し、昨年8月に、法科大学院に通う男子学生が同性愛者であることを無料通信アプリ「LINE」で多くの人に広められたことで精神的に苦しみ、校舎から転落して亡くなった事件を解説。男子学生から相談を受けた大学の相談機関は、どんな人を好きになるかを示す「性的指向」の問題として対応すべきところを、認識と性が異なる「性自認」の問題として捉え、性同一性障害の専門機関を紹介しており、男子学生が求める対応と食い違っていたことを指摘し、セクシャルマイノリティーを正しく理解することの大切さを強く訴えた。
就職については、セクシャルマイノリティーであることが分かると採用を見送られるなどの差別的対応が根強くあることを話し、企業には採用や福利厚生の面で一般の人々と同等の待遇を保障するよう呼び掛けた。
また、正社員として就職すると、性別適合手術などに必要なまとまった休みが取れないのではと考え、あえて非正規社員として就職する人もいる実態を紹介し、理解を求めた。
後半は、独立行政法人情報処理推進機構技術本部セキュリティセンターの吉川誠司さんが「情報セキュリティと人権」と題して講演した。
吉川さんは平成27年に国内で発生した個人情報漏えいに対する損害賠償の総額(想定)が約2541億円に上っているデータを示し、防止に向けた取り組みの重要性を強調。メディアの取材や製品への問い合わせなどを装って個人情報の引き出しを狙う攻撃メールの例を紹介し、不審なメールが届いた場合の対応や運用について、事前に組織としてルールを構築しておく必要性を訴えた。