留学生が教える多言語サロン 和大で継続
和歌山大学(和歌山市栄谷、瀧寛和学長)の外国人留学生が、それぞれの母国語や民族文化を日本人学生などに紹介する「多言語サロン」は、平成21年に始まって以来、気軽に異文化を学べる場として定着している。英語や中国語に加え、ハンガリー語やインドネシア語なども学べ、外国語系学部を持たない大学としては学習環境が充実しており、同大国際交流課の橋正美副課長は「無料で気軽に参加できるのが大きな魅力。ぜひ足を運んでほしい」と話す。
「多言語サロン」は各年度に原則2期開かれ、1期の開催期間は約3カ月。同大国際教育研究センター内の空きスペースを活用し、留学生らが授業の空き時間などに母国語などを教えている。28年度は11月から1月にかけて開かれ、留学生9人が7言語を教えた。1回90分で、参加者は留学生から母国語を学んだり、さまざまな会話を通じて交流を深めることができる。留学生や地域住民の参加も可能で、中国人留学生がベトナム語を学ぶなど、参加者の顔ぶれや取り組む内容は多種多様。各期につき40~50人程度が参加している。
多言語サロンが始まったのは21年5月。同センターと同大生協が、日本人学生と留学生が気軽に交流できる場をつくろうと開いた。開設からしばらくは生協が場所とともにパンやコーヒーなどを提供し、英語でかるた会を開くなど、参加しやすい環境づくりに努めた結果、毎回約20人が集まるようになったという。
25年に場所が変わり、現在の本格的なシステムがつくられた。教える役の留学生には時給が支払われるなどサポート体制も充実し、学べる言語も多様化。英語と韓国語が多い他は、各年の留学生に左右されるが、近年ではベトナム語のサロンも毎年開かれているという。
28年度の最終日はアラビア語の講座。エジプト出身で同大大学院観光学研究科修士1年のミナ・カマル・アシャム・シャフィクさん(28)が、中国出身で経済学部研究生の邱国鳳さん(26)にアラビア語の読み方をアドバイスした。
古代ギリシャやローマの歴史を紹介するアラビア語の文章に、学習を始めて約3カ月という邱さんは戸惑う場面もあったが、ミナさんから「発音がきれい」「どんどん読めるようになっている」と褒められると、笑顔を見せた。邱さんはイスラム圏の歴史に関心があるといい、「アラビア語を学んで、旅行に行きたい」と目を輝かせ、ミナさんは「母国語を教えるのは難しいですが、エジプトのことを知ってもらいたくて頑張っています」と話していた。
16年度の法人化以降、国立大学の財政を取り巻く環境は厳しさを増しており、同大も例外ではない。留学生の募集や講座の時間割作成など事務的負担も大きいが、同センターの長友文子副センター長は「留学生と交流することで日本人学生が自国の文化を見つめ直すことができるのは大きい。各国の文化を紹介するゲームなども交え、楽しく学べる環境になっています」と話し、活動の成果に手応えを感じている。
29年度の開講時期は未定だが、継続する方針。