低周波音被害を考える 弁護士会がシンポ

電気機器などから発生する低周波音と健康の関係について考えるシンポジウムが15日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、約80人が講演やパネルディスカッションに耳を傾け、理解を深めた。

和歌山弁護士会(藤井幹雄会長)が主催。低周波音が健康に与える影響について、多くの人に知ってもらおうと企画した。

低周波音は、おおむね周波数が100Hz以下の音波。近年、風力発電施設をはじめ、空調室外機や給湯機器などからの低周波音による不眠や頭痛などの健康被害を訴える人が増えており、注目されつつある。

基調講演では、京都大学の小林芳正名誉教授が、低周波音が人体に与える影響について、物理学の研究成果などを紹介。

小林名誉教授は低周波音について、「防ぐのが難しく、低周波音を下げるには、(対象物から)遠くに離れるしかない」と強調。人体にとっての低周波音の有害性については、公害研究で知られる故汐見文隆氏の学説「日本人は言語音をつかさどる左脳に偏って低周波音を受け取りがちで、それが自律神経中枢の変調につながる」を紹介した。

シンポジウムでは、低周波音による健康被害の問題に詳しい弁護士やNPO
法人代表らが「低周波音被害の実態とその救済」と題して議論。大阪弁護士会所属の岸秀行弁護士は法科大学院生時代に自宅の寝室から約1㍍の位置に自然冷媒ヒートポンプ給湯機が設置されたことで、毎晩自動車のアイドリング音に似た音が聞こえるようになり、不眠症に陥った経験を告白。調停を通じて移設を実現させた岸弁護士の活動について、同弁護士会所属の山本浩貴弁護士は「相手方に落ち度があるのではと疑い、早い段階から動いたことが良かった」と話し、被害発生から対応開始に至るまでの早さを評価した。山本弁護士は、低周波音の被害を訴える機関として、公害審査会(和歌山の場合は公害紛争処理制度)を挙げ、「この問題に対する関心の高まりを感じている」と語った。

NPO法人STOP低周波音被害の今﨑廣美会長は、平成22年ごろから隣家に家庭用燃料電池システムが設置されて以来、自宅に戻れない日々が続いていることを告白。不眠や吐き気などに悩まされ、2カ月半の間に体重が7㌔減ったと話した他、家族崩壊の危機にも直面したと語った。

今﨑会長は相談先の自治体などで十分な対応を受けられなかったことにふれ、「なかなか相手にされず、因果関係を証明するのに苦労した。団体には悲惨な相談が相次いでいる。この問題にもっと関心を持っていただきたい」と呼び掛けた。

風力発電の被害を考える会・わかやまの松浦攸吉世話人代表は、県内における風力発電の被害とその対策について報告。風力発電の被害について「地域住民が認識して対処法を取らないといけない」と住民の主体的な活動の必要性に言及し、被害状況を示したDVD作成などの活動を紹介した。低周波音による健康への被害について、松浦世話人代表は「(幸福追求権などを定めた)憲法13条や(生存権を保障した)同25条に抵触し、人権を侵害している」と強調。人権問題として捉え行動することの重要性を強調した。

意見を交わすパネリストたち

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