幻の調味料「煎り酒」 県産梅と清酒で製造

梅干しや酒、かつお節などを使用して造られる日本発祥の調味料「煎り酒(いりざけ)」を広めようと、㈱紀州ファーム(田辺市、樫谷輝雄社長)が県産の梅干しや清酒を使用した新商品「紀州いりざけ」を製造した。しょうゆの普及に伴い希少な調味料となった煎り酒を県内で製造するのは初めてといい、新たな地域ブランド誕生に期待がかかる。

煎り酒は、酒に梅干しや昆布などを加え煮詰めた調味料で、室町時代末期に考案されたとされる。江戸時代中期にしょうゆが普及するにつれ、使われる機会が減少。現在では幻の調味料と呼ばれ、一部の高級料理店でのみ使われてきたが、塩分がしょうゆの約半分というヘルシーさなどが数年前から話題となり、今後の活用拡大に期待が高まっている。

紀州南高梅の製造・販売などを行っている同社の樫谷社長は2年前に大阪府の料理人を通じて煎り酒の存在を知り、国内各地のメーカーが販売している商品を研究。日本一の梅生産量を誇る県内は、煎り酒を造る環境が整っていると考え、県内の清酒メーカーと協力し試行錯誤を重ね、昨年11月に販売を始めた。樫谷社長は自社の煎り酒について「南高梅の味が生き、さっぱりしている。塩分が控えめで白身魚に合うと思う」と自信をのぞかせる。

価格は1本(200㍉㍑)1200円(税別)。白浜町のホテルや田辺市の産直市場「よってって」、同社サイトで購入することができる。本紙エリアでは、岩出市の古民家カフェレストラン「ねごろ初花」や和歌山市の「厨房 十」が同社の商品を料理に使用している。今後はインターネット通販「アマゾン」や和歌山市の「よってって」でも販売する予定。

樫谷社長は「湯浅醤油(しょうゆ)のようなブランドを作りたい。和歌山に来て海鮮と煎り酒を楽しんでもらえたら」と話している。

「紀州いりざけ」を手に樫谷社長

「紀州いりざけ」を手に樫谷社長