「共謀罪」法成立 市民団体など抗議続く
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め、「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案は15日朝、参議院本会議で採決され、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。18日の国会会期末が近づく中、与党は、参議院法務委員会での採決を省略する「中間報告」の奇策に出ることで成立を図った。採決の結果は賛成165票、反対70票だった。
同法は、組織的犯罪の実行に合意した段階で処罰するもので、277の犯罪が対象となっている。政府は、テロ対策や国際組織犯罪防止条約の批准に必要としてきたが、野党や市民団体、法曹関係者などからは「監視社会につながる」「内心の自由を侵害しかねない」などの批判が上がっていた。
県内でも同法への反対運動は広がり、和歌山弁護士会は声明で、処罰対象が国民一般に適用される恐れがあること、捜査のため日常的に市民の監視が行われ、国民のプライバシーが侵害される社会となる恐れがあることなどを指摘。
同法への反対デモなどを呼び掛けてきた「憲法九条を守るわかやま県民の会」は成立を受け、「民意に逆らって強行採決したことに、満身の怒りを込めて断固抗議する」とし、同日も和歌山市の県庁前交差点で抗議活動を行った。
同法成立についての県内主要政党の見解は次の通り。
自民党県連・吉井和視幹事長 テロの恐怖は大変な脅威。テロ対策は先進国の緊急の課題であり、東京五輪や国際会議などへの備えとして法整備は当然だ。強行採決は、政局をにらんだ野党の反対により、やむを得なかった。
民進党県連・浦口高典幹事長 「一億総監視社会」をつくりかねない法律が成立したことに強い憤りを感じる。本気でテロ対策に取り組むのであれば、水際対策の強化などに取り組むべき。テロ対策より国民監視を優先した政府与党の責任は極めて大きい。
公明党県本部・多田純一代表 条約に加盟するためにも法律は必要。中間報告は会期末が近づく中、やむをえない面があったのではないか。反対の意見に対しては丁寧な説明が必要だ。
共産党県委員会・下角力委員長 本会議での採決強行は憲政史上まれにみる暴挙。法案はテロの定義もなく、内心の自由を侵すなど、憲法違反は明らか。暴挙を糾弾するとともに、廃止を求める戦いを広げる。
日本維新の会県総支部・林隆一代表代行 加計学園問題で国会を延長したくなかったことが見え、与党の数の力で押し切った強行採決には憤りを覚える。法改正は賛成だが、法の透明性を高め、国民が納得するように努めてほしい。