防災に女性の視点を 海南で自主組織研修
南海トラフ地震に備え、巨大災害発生時に重要となる組織的活動の在り方を学ぶ、和歌山県海南市主催の「第1回自主防災組織研修会」が3日、市保健福祉センターで開かれた。東日本大震災を経験し、災害伝承語り部として活動している佐々木美代子さん(岩手県陸前高田市)が講演し、市内の自主防災組織代表者や連合自治会長、防災士ら約220人が熱心に耳を傾けた。
佐々木さんは「東日本大震災の被災地における体験・教訓」をテーマに、同震災発生当時の様子や避難の経緯、避難生活の現状、自主防災への提言などを、現地の写真や資料を示しながら語った。
佐々木さんによると、地震発生当時、陸前高田の市民は避難を迫られながらも、警報の遅れや市の無線機故障などによる情報の不足のため、危機にうまく対応することができなかったという。
避難生活については、被災当時、同市地域女性団体協議会副会長として発生の翌日から炊き出し支援を行ったことを紹介し、その経験や詳細な聞き取り調査などを踏まえ「変化を伴う災害時対応は、日常生活に強い女性の視点が必要」と力を込めた。
被災者は家族が津波にのまれていく様子の記憶や自責の念に苦しみ、それは震災後6年を経過しても続いていることを話し、「命は自分だけのものでなく、その人につながる人のものでもあります」と、災害から命を守ることの大切さを力を込めて訴えた。
さらに、震災の教訓として「津波てんでんこの実践を」「想定にとらわれるな」「二度逃げで身の安全を守れ」などと話し、早期避難の重要性を強調した。
講演に続き、海南市の担当者から、自主防災組織育成事業補助金や、防災訓練の事故でけがなどをしたときの補償、大規模災害時の防犯対策などについて説明があった。
同市危機管理課の尾﨑正幸課長は「自主防災組織活動について、陸前高田市での貴重なお話は大変参考になる。さまざまなコミュニティー活動で地域住民が顔見知りになり、平時から助け合いができるよう取り組みを進めていきたい」と話していた。