精神障害の医療費助成を つばさの会訴え

重度心身障害児者医療費助成制度において、身体・知的障害者は多くの自治体で全診療科目の医療費の無料化が進んでいる。一方、精神障害者は精神科の通院医療以外の科目が対象とされていない場合が多く、当事者の家族らが助成の拡大を求めている。

家族に精神障害を抱える会員が、互いのサポートや障害への理解を深める活動に取り組んでいるNPO法人和歌山市精神障害者家族会「つばさの会」(岡田道子理事長)は10日、定例会に国会議員や県議らを招き、医療費助成の問題を中心に意見交換した。

同会の調査によると、重度心身障害児者医療費助成制度の対象に精神障害者を含んでいる和歌山県内の市町村は、海南市、岩出市、紀の川市、紀美野町など7市町あり、適用の範囲は、精神障害者保健福祉手帳や障害者年金の等級などによって各市町で異なる。県庁所在地の和歌山市や田辺市などでは行われていない。

意見交換には医師の熊野正士参議院議員、多田純一県議、和歌山市議らが出席。家族会からは、他の障害との違いとして、精神障害は向精神薬を服用し続ける必要があり、副作用もあるため、恒常的に医療費がかかるとの訴えがあった。

子の症状が重い場合、きょうだいで発病した場合などは特に親の負担が大きく、介護などで疲れ果ててしまうため、福祉サービスを利用したいところだが、その費用を捻出することが困難な家庭が少なくない現状などの説明もあった。

「障害年金だけではやっていけない」「親が働いている間はいいが、親も年金生活になり、まして亡くなった後は、障害のある子どもだけでは生活もままならない」といった切実な声が上がり、国や自治体に助成の拡充を訴えた。

熊野参議院議員は、精神障害者への医療費助成の実施に自治体間でばらつきがあることが、不公平を生む懸念があるとし、国に現状の認識をただしていく考えを示した。

多田県議は、福祉行政の中で精神保健行政が立ち遅れている現状があるとし、「議員として皆さんの声を代弁し、行政に届けたい。皆さんには声を上げ続けてほしい」と話した。

意見交換ではこの他、精神障害者の財産管理を家族ができなくなった場合の後見人の在り方や、福祉事業者や医療機関の側からサービスの潜在的な利用希望者に手を差し伸べていく「アウトリーチ」の推進などについても話し合われた。

つばさの会と意見交換する熊野議員㊧ら

つばさの会と意見交換する熊野議員㊧ら