伝統に西洋の趣き 4代大塩昭山茶陶展
奈良の赤膚焼(あかはだやき)窯元4代目大塩昭山さん(57)の襲名20周年を記念した茶陶展が17日まで、和歌山県和歌山市湊通丁北のアバローム紀の国ギャラリー龍門で開かれている。大塩さんは「紀州では4年半ぶりの個展。伝統的なもの以外にも少し変わった焼き物など、20年間の仕事を見ていただければ」と話している。
美術・茶の湯道具の翠洸洞(津市)が主催。赤膚焼は温かみのある乳白色の素地に、お堂や人、松竹梅など「奈良絵」と呼ばれる素朴で味わい深い上絵がつけられた陶器。
大塩さんは伝統的な赤膚焼に、独自の創作を加えたテーマで制作しており、近年は江戸時代の赤膚の名工・奥田木白と時を同じく西洋にブームが起きたアール・ヌーヴォーを意識。花や植物、魚など、ゆるやかな曲線の造形をモチーフにした作品も並ぶ。
この他、正倉院宝物をテーマにしたクジャクの絵入りの茶わん、万葉集を題材にした窯変茶わん、「かぎろひ」や「若菜摘」など伝統的な焼き物を紹介。法隆寺金堂の天蓋にちなんだ水指はエメラルドグリーンの色合いで耳に鳳凰をあしらい、壁画の飛天を描いたもの。一つの作品に金堂が凝縮されていると話題を呼び、来年1月から奈良県立美術館で開かれる展覧会での展示が決まっているという。
大塩さんは「今回のように、作品性の強い赤膚焼が見られる機会はあまりないと思います。飲み口の柔らかい茶わんで、ゆったりと一服をお楽しみください」と呼び掛けている。
午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。会期中は和歌山の各社中による茶席も設けられる(午前11時~午後4時)。問い合わせは同所(℡073・436・1200)。