ネコ館長が天国へ 市立博物館PRに一役

和歌山市立博物館(湊本町)周辺に住み着き、「ネコ館長」として来館者や地域に親しまれた雄ネコが旅立った。同館の公式ツイッターで、愛くるしい姿で展覧会などをPRする存在だっただけに、同館では「博物館を盛り上げてくれて感謝の思いでいっぱい。もし天国があるのなら、持ち前の愛嬌(あいきょう)で向こうでも幸せに過ごしてほしい」としている。

それは突然のことだった。先月13日の朝、すぐ近くの市民会館から額田雅裕館長宛てに連絡が入り、市民図書館と市民会館の間の細い道で車にひかれてしまったようだという。

ネコ館長は、博物館前の駐車場外へ出ていくことはほとんどなかったというが、前日夕暮れに市民会館前で音楽イベントがあり、「にぎやかな雰囲気が気になってお出掛けしてしまったんでしょうか」と博物館の女性スタッフは話す。前日の夕方には、セミを追い掛ける元気な姿が確認されていた。

推定6、7歳。近くに住む人がマンションへ引っ越す際、置き去りにしたと見られる地域猫。とにかく人懐っこい性格で、同館の職員通用口近くに寝泊まりし「ミル」「ちえちゃん」など、さまざまな呼び名で来館者や地域に親しまれていた。

同館の公式ツイッターに登場したのは2年前の春。以来、愛らしい姿で同館の展覧会情報などを発信し、広報の役割を担ってきた。

中でも、昨年春に東京で開かれ入場4時間越えの待ち時間だった伊藤若冲展と比較し、同館前で寝そべった写真とともにつぶやき、「待ち時間0分」をアピール。これが大きな反響を呼び、ネコ館長に会いに来る人も現れ、ネコ専門の雑誌『猫びより』でも小さな特集が組まれた。

いなくなった後も、訪れた人から「ネコ館長は?」と聞かれることがあり、同館入り口付近に写真や造花を置いた小さなスペースを設置。館長のファンと思われる人から、いつしか折り鶴やジャーキー、ジャコのおつまみなどが置かれるようになり、写真に手を合わせる人の姿も。

ネコ館長と〝二人三脚〟で情報発信してきた同館の近藤壮学芸員(46)は「もとは野良猫だったので、皆さんに愛されて十分幸せだったのかなとも思います。ネコの館長はいなくなってしまいましたが、これからも博物館をよろしくお願いします」と話している。

博物館入り口付近には小さな祭壇が設けられた

博物館入り口付近には小さな祭壇が設けられた