郭家住宅の公開へ 保存会が毎月第1日曜

 国の登録有形文化財である郭家(かくけ)住宅(和歌山県和歌山市今福)の保存・活用を願い、地域住民らが「郭家住宅の会」を設立した。毎月の第1日曜を開放日として、洋館を一般に公開。写真展など季節に応じたイベントを予定しており、世話人代表で建築史家の西山修司さん(67)は「まずは一歩前進。歴史と魅力ある地域の宝を後世に伝えるためにも、保存の声を一層大きくしていきたい」と話している。

 郭家洋館は明治10年(1877)、代々紀州藩の御典医であった郭家の7代百輔氏が、病院兼自宅として建築。2階にバルコニーを設けたコロニアル様式で、全国的に見ても貴重な、和歌山の文明開化を象徴する建物。現存する明治初期の近代建築は多くが公共施設で、郭家のような個人住宅は極めて珍しいという。研究者からは国指定文化財級の価値があるとの評価もある。

 建物は2年前に百輔氏のひ孫・幸子さんが98歳で亡くなるまで居住。老朽化が深刻で所有者の力だけでは維持管理が難しくなりつつあり、昨年5月には建築史学会から市と県に保存要望書を提出。指定文化財への格上げを含めた、公的な保存を訴えている。

 昨年には残された古文書などから、建物の歴史・文化的価値を高める新たな発見があった。併せて、地区の連合自治会らが学習会を重ね、保存・活用への機運を高めてきた。

 発足した保存会のメンバーは約50人。建物の存在をより多くの人に知ってもらおうと、毎月の洋館公開を決めた。所有する11代当主の郭一彦さん(71)は「一度は建物の解体も考え思いとどまったが、朽ちる一方で何年もつか不安。何かのかたちで建物を使ってもらい、保存活動に賛同してくれる方が増えればうれしい」と話している。

 10月の公開日の1日には、月見を兼ねた洋館のライトアップと琴の演奏会を開催。午後6時から8時まで。参加費300円。

 11月11日には県立近代美術館2階ホールでシンポジウム「近代遺産の保存と活用―郭家住宅を事例として―」を午後1時から開く。東京大学の藤森照信名誉教授を講師に迎える。保存会への問い合わせは西山さん(℡090・1983・1366)。

洋館の前で「郭家住宅の会」メンバー

洋館の前で「郭家住宅の会」メンバー