棒付あめの型400種超開発 海南タカラ製菓

ネタの色や質感まで表現した握りずしや人気キャラクターなど、多彩な棒付きキャンディーを製造している㈱タカラ製菓(和歌山県海南市藤白、光岡隆行社長)は、400種類を超えるキャンディーの型のバリエーションを生み出してきた、オンリーワンの技術を持つ企業。首都圏や海外からの注文も増えているといい、昨年経営を引き継いだ光岡社長(33)は、営業力を強化し、販路拡大を目指している。

創業は1980年。さまざまな形状のキャンディー、あめの生産を可能にしているのは、自社が持つ職人の高度な成型技術。「タカラ製菓ならどんなものでも作れる」と全国の取引先から高い評価を受けている。

各企業のオリジナルキャラクターや、大手雑貨店からのユニークな形状の発注など、求められる内容はさまざま。江崎グリコ㈱のキャラクターのキャンディーでは、型押しで作ったあめの顔に手作業で別の黄褐色のあめを流し、べっこうあめに仕上げた。

中国やアメリカなど海外で特に人気が高いのが、握りずしのキャンディー。工程は、炊き上げた砂糖と水あめに味と色を付け、大きめの型に流した後に細く伸ばしてカット。棒を付けて、トロやエビなどネタの型に詰め、模様を彫ったふたで押して仕上げる。「型の1回押しで仕上げるあめ屋は他にないんですよ」と光岡社長は話す。

高い技術を要する型を製作しているのは光岡社長の父、相談役の光岡誠造さん(61)。事業承継後も職人として現場に立ち続けている。粘土や消しゴム、シリコンなどで仮型を作り、実際の製造には主に鉄の型を使用する。日常は穏やかだが、精巧な型を作り上げることに情熱を燃やし、工場では厳しい表情も見せる。職人かたぎで営業はほとんど行わず、発注を受けて要望に丁寧に応えるスタイルを貫いてきた。

一方、昨年6月に事業を継いだばかりの光岡社長は、20代前半には関東で大手食品会社の営業職に従事した経験があり、「営業職が好きなんです」と話す対照的な面がある経営者の2人。現在、製造に携わっているのは光岡社長を含めて9人で、勤続歴の長い人が多く、感謝は尽きないという。

「海南市内のあめ屋の横のつながりも深く、先輩方に教えていただきながら頑張っています」と、同業者から学ぶ姿勢も大切にしている。まだ事業承継して1年目。父が築き、自社の大きな財産となっている技術を生かし、より多くの人に棒付きキャンディーを手にしてもらおうと、販路拡大の営業に力を注ぐ。

握りずし型キャンディーを手に光岡社長

握りずし型キャンディーを手に光岡社長