震度6強~7で倒壊の危険 和歌山城天守閣
和歌山県の和歌山市は19日、昨年8月から実施していた和歌山城天守閣の耐震診断の結果を発表し、震度6強~7の大規模地震で倒壊する危険性が高いことが分かった。今後、庁内のプロジェクトチームや外部有識者による委員会を設置し、木造再建や耐震補強などを選択肢に、対策を検討する。
診断は一般財団法人日本建築防災協会による「既存鉄筋コンクリート造建造物の耐震診断基準(2017年改訂版)」に定める第2次診断法と「木造住宅の耐震診断と補強方法(12年改訂版)」に定める限界耐力計算法で判定。建物の耐震性を構造耐震指標であるIs値で示した。調査は天守閣のコンクリートや鉄筋を採取して強度や劣化の具合を確認し、ボーリング調査も行った。
Is値が0・3未満だと大地震で倒壊、崩壊する危険性が高いとされ、大天守閣では1階が0・18と最低値。その他では乾櫓(やぐら)で0・29、二の門櫓で0・12、西南多聞で0・21となった。楠門の2階では、耐用年度中の地震に対し損傷しない限界を示す「損傷限界変形角」(数値が小さいほど安全性が高い)が基準となる120分の1を上回る81分の1となり、天守閣を構成する9棟中5棟で倒壊の危険性がある結果となった。
市は25日に関係課によるプロジェクトチームを庁内に結成。さらに姫路市日本城郭センターの田中哲雄名誉館長を委員長に迎え、史跡和歌山城保存整備委員会を5月に開催する予定。木造再建か耐震補強か、避難対策を考え現状を維持するか、早急に決めたいとしている。天守閣では当面、ゴールデンウイークまでに避難経路を貼り紙で掲示し、地震発生時には係員が避難誘導を行う対応を取る。
今回の診断結果について尾花正啓市長は「再建60周年というタイミングで発覚したが、和歌山城の在り方を検討できる大事な時期になるのではないか。砂の丸広場など城内は広いので、記念イベントなどに結果はそれほど影響を及ぼさないと思う。しっかり対策を検討して魅力ある城にしていきたい」と話した。