乙姫役に坂本さん 紀三井寺の龍灯行脚9日
龍宮から乙姫が龍灯をささげて訪れたという紀三井寺(和歌山県和歌山市)の伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」で、初めて行われたオーディションにより、乙姫役に近畿大学付属和歌山高校3年の坂本こころさん(17)=同市=が決まった。乙姫と共に行脚する女官役4人も選ばれ、9日の本番に向けて練習が進められている。
紀三井寺では毎年8月9日、一日の参詣で千日分の功徳が得られるという「千日詣」が行われており、伝説はこの由来となるもの。約1250年前、唐から日本に渡り、同寺を開いた為光上人が大般若経を写経した際、乙姫が現れて観音霊場の建立を喜び、毎年の同日に、海の中でも消えない龍灯を献上しに、龍宮から訪れると話したと伝えられている。
「龍宮乙姫龍灯献上行脚」は、この伝説を発信し、地域活性化を図ろうと昨年初めて実施。継続を目指し、会社役員や舞踊団体代表らがことし4月に実行委員会(岩崎稔誉子会長)を結成した。
2年目の今回は乙姫役を選ぶオーディションを初開催。30人の応募があり、書類選考を通過した25人の2次審査の結果、実行委員ら審査員9人の満場一致で坂本さんが乙姫役に選ばれた。実行委によると、本当に海から現れたような、神秘的な雰囲気を感じられることが決め手になったという。
乙姫の行脚に同行し、本堂で舞う女官役には、りら創造芸術高校3年の京谷沙織さん(17)=海南市=、和歌山北高校3年の福田乃愛さん(17)=和歌山市=、関西大学2回生の武田栞奈さん(19)=同=、大阪経済大学3回生の内藤さよさん(20)=同=が決まった。
坂本さんは「こういう役に選ばれることは一生に一度だと思う。乙姫はすごく気高いイメージがあるので、見る人にそう思ってもらえるように全力で演じたい」と決意。京谷さんは「乙姫のお付きとして恥ずかしくないよう務めたい」、福田さんは「大きな役を頂いた。乙姫と同じ舞台に立てるのは光栄」、武田さんは「人間らしくない、神の使いの雰囲気を出したい」、内藤さんは「乙姫が神々しく見えるように踊りたい」と話す。
振り付けと演出、舞踊の指導は、実行委副会長で和歌山オリエンタルダンス協会代表理事、昨年の乙姫役を務めたエヴァ香陽さんが担当。和歌山市内のエヴァさんのスタジオで初練習が行われ、大役に選ばれた5人は緊張した表情で、姿勢や手足の動きなどの指導を受けた。
エヴァさんは「今回は地域の若い人が参加してくれて、未知の挑戦になる。龍宮の世界を本堂で再現できるよう頑張りたい」と話し、岩崎会長は「当日が楽しみなメンバーを選ぶことができた。多くの皆さんに来てもらいたい」と来場を呼び掛けている。