ごみだらけの1人世帯 医療、清掃…連携支援

 全国的に1人暮らしの高齢者世帯が増え、住人が家族や地域コミュニティーとつながりが希薄な場合には、体調を崩しても通院などの対処ができず、ごみを捨てに行くことができないといった生活上の問題が生じてくる。和歌山県和歌山市内で清掃業者や医療関係者、地域包括支援センターなどが協力し、こうした問題を抱える住人を支援する取り組みが行われている。

 同市ではことし6月30日現在、65歳以上の高齢者の1人暮らし世帯は3万5136世帯に上る。

 7月上旬、市内で1人暮らしをしている70代男性が敗血症のため自宅で倒れ、和歌山生協病院(有本)に救急搬送された。連絡もなく欠勤した男性を心配し、様子を見にきた職場の関係者が119番通報した。

 治療を受けて回復している男性は8月下旬に退院する予定となったが、自宅の中は飲み終えたペットボトルやたばこの空き箱、紙コップ、薬の空き容器などの生活ごみであふれ、電化製品も故障するなどして療養生活ができるような状態ではなく、同院で患者の相談に当たっている医療ソーシャルワーカーの長谷英史さん(46)を中心に、退院後の支援策を講じることになった。

 同院の職員や看護師、特殊清掃を手掛ける池内興業合同会社(松島、池内康二代表)、地域包括センター和佐の職員ら約10人が男性宅へ。ごみが詰まって開かなくなった玄関の扉を外して家に入り、弁当の空き容器や壊れた家財道具などのごみを回収。総量は約1㌧に達した。

 さらに、室内の消毒やエアコンの取り替え、放置された自動車の処分の手続き、介護保険の申請などに至るまで、退院後すぐに男性が生活できる環境を整えるため、さまざまな手配を行った。

 今回のような新たな支援の取り組みは、社会福祉協議会のスタッフが清掃作業に参加している大阪府内の取り組みを長谷さんが知り、感銘を受けたことがきっかけとなった。

 長谷さんによると、1人暮らし患者の退院後の生活環境に関する支援は、これまでは清掃業者への依頼にとどまっていたが、医療関係者が患者の生活環境を知ることにより、一人ひとりの実状に寄り添った支援ができるという。

 長谷さんは「生活の乱れは、本人の責任だけでなく、精神疾患が原因となっている場合などもあり、それぞれの事情が必ずある」と強調する。特殊清掃業者としてさまざまな現場を見てきた池内代表(35)は「清掃業者だけでなく、医療関係者や地域の支援者も一緒に掃除をすると、退院後はごみをためない生活ができるよう、細やかな支援ができ、根本的な解決につながっていくのではないか」と話していた。

不用品を回収し、トラックに積み込む池内代表

不用品を回収し、トラックに積み込む池内代表