IWCは設立趣旨から逸脱 日本の鯨類「活用」提案を否決

 自民党総裁選挙が終わりました。ご存知の通り、安倍候補が石破候補を破り3選を果たしました。ご協力頂きました方々にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
 さて、その総裁選挙戦の真っただ中ではありましたが、私はIWC(国際捕鯨委員会)の総会に参加するため、ブラジルのフロリアノポリスという街に行ってまいりました。
 空港に到着早々、捕鯨反対のデモ隊に取り囲まれ、現地警察の警備のもとでホテルに向かう、という騒々しい幕開けでした。
 今回の総会は、①生息数が回復している鯨種に限って商業捕鯨を再開すること②重要な事項については従来の「4分の3以上」ではなく「過半数」の賛成があれば決定できるように手続きを変えること、の2点をまとめて日本より提案する方針で臨みました。
 ①について、IWCの本来の目的は鯨類の持続的な「活用」と「保護」を目的として設立されたものである以上、生息数が回復していることが科学的に認められた鯨種については捕ることを認めるべきだというのがわれわれの主張です。②については、手続きを緩和することによって種々の議案が採択されやすくなるため、①と②を抱き合わせで提案することによって、捕鯨反対派からも賛同を得られやすくなるのでは、という戦略でした。
 結論から言うと、残念ながら日本の提案は否決されてしまいました。いくら科学的に鯨資源の回復が認められても捕鯨はすべきではない――IWCは本来の設立目的を忘れ、今や鯨の「保護」だけを目的とした団体になってしまっていると言わざるをえません。反捕鯨国側に言わせると、ホエールウォッチングこそが「活用」だという驚くべき理論です。
 また、総会最終日間近というタイミングで、現地の名前をとった「フロリアノポリス宣言」なる提案が反捕鯨国側から出されました。IWCならびに捕鯨をめぐる世界の考え方は大きく変わり、これからは鯨類資源の利用ではなく保存のための国際機関になる、という内容です。
 日本をはじめとする捕鯨国側は、それならばIWC条約そのものを改定すべきだと猛反発。そもそも、決して少なくない数の国々が反対意見を出しているのに、世界の捕鯨をめぐる考え方は変わったとなぜ断じることができるのか。全く理解できません。
 しかし、残念ながら過半数を取られ、結果的に採択ということになってしまいました。この宣言に法的拘束力はありませんが、先に述べた通り、IWCは設立の趣旨から大きく逸脱し、その存在意義を失ってしまったと言わざるをえません。
 今回は珍しく(?)、日本から大胆な提案をしましたが、それも否決され、これ以上もう手立てがありません。かくなる上は……です。
 私たちはこの組織にいる必要性を根本から考え直すべき時が来ているのでは、と痛感しました。近々、この件を党内でも報告する場を設け、これからの方針を立てていくつもりです。今後の推移にぜひご注目ください。