常識破りの広報戦略 近大の世耕部長講演

近畿大学総務部長の世耕石弘(いしひろ)さん(49)の講演会が28日、和歌山県和歌山市友田町のホテルグランヴィア和歌山で開かれた。5年連続で入試志願者数日本一を達成、メディアを意識した情報発信「広報ファースト」を掲げる世耕さんは「頭の硬い人が多い大学業界で、みんなが『やったらアカン』と思っていることをやり続けてきた。常識があるところこそ、それを崩すと見えてくる景色がある」と、ユニークな近大流の広報戦略を紹介した。

国際ロータリー第2640地区が27、28の両日に開いた地区大会で、市民向けの公開講座として開催。約450人が来場した。

世耕さんは同大学の創立者で和歌山出身の初代総長・弘一氏の孫で、経済産業大臣・弘成氏の弟。「知と汗と涙の近大流コミュニェーション戦略」と題して講演した。

同大学は、紙の願書をいち早く廃止し今では一般的となったネット出願を日本で最初に導入。世界初のクロマグロの完全養殖などで、大学の知名度を一躍全国区に押し上げた。

さまざまな戦略の背景にあるのは、人口減少への危機感だとし「きのう非常識だと思っていたことが、ころっと常識になるような時代。過去のノウハウは役に立たない」と、情報発信の仕方を変えていくことが重要であると話した。

「コミュニケーションの基本は『伝えた』ではなく、『伝わったか』」だとし、発信したいメッセージを数分に凝縮させた大学のPR動画や、24時間利用できる自習室を備えた新図書館を紹介するマイクロドローンを使った映像などを紹介。学術的な内容を一切排除した大学案内など、常識や慣例を打ち破ってきた事例を挙げた。

「関関同立」「産近甲龍」といった固定化された大学の序列の打破にも取り組む。創立93年と、他大学に比べ歴史の浅いことを逆手に取り、「新しいことに挑戦する若い大学」を武器にした広報を意識。大学のさまざまな評価やイメージランキングを示し「時代は、親しみやすく、エネルギッシュな近大型の人間を欲していると思う」と話した。

「過去のノウハウは役に立たない」と世耕さん

「過去のノウハウは役に立たない」と世耕さん