カンカンナンマイダを後世に 海南・布片目
江戸時代後期の浄土宗の僧・徳本上人をしのぶ和歌山県海南市幡川の布片目(ぬのかため)地区伝統の行事「カンカンナンマイダ」(通称なまいだ)が26日に行われた。法要開始を告げる鉦(かね)の巡回や、大きな数珠を囲んで読経しながら回していく「数珠回し」など、独特の儀式が受け継がれてきたが、高齢化により存続が危ぶまれており、後世に残すため、今回は住民が記録写真と映像を撮影した。
徳本は1758年、現在の日高町に誕生。全国を行脚して昼夜不断の念仏や苦行を行い、庶民をはじめ武家、皇族からも信仰を集めた。各地に遺した「南無阿弥陀仏」の文字は丸みを帯び、終筆が跳ね上がっているのが特徴で、縁起が良いとして尊ばれており、各地にゆかりの碑が多数ある。
布片目地区の伝承によると、1800年ごろ、流行した疫病を徳本が念仏で鎮めたことが起源となり、徳本が死去した1818年以降、遺徳をしのび、地区内の各家庭が持ち回りで施主を務め、住民を挙げて法要を続けてきたという。
四半世紀ほど前から簡素化されているが、かつての法要の進行は、男児が鉦をたたいて地区を巡回し、始まりを知らせると、各家では「おくどさん」(へっつい=煮炊きをするかまど)と住人の火災予防、無病息災を願い、竹に取り付けた祈祷(きとう)札でおはらいをした。施主宅では鉦を激しくたたきながら般若心経を唱えた後、住民が輪になって座り、長い大数珠を手から手へ回し、結び目が来ると頭に当てて無病息災を願い、数珠が切れるまで回した。施主は豆をまき、子どもたちが拾って持ち帰った。
鉦が激しく打ち鳴らされることから「カンカンナンマイダ」と呼ばれ、長く親しまれてきた。
全国各地の徳本ゆかりの行事が減少する中、残された貴重な法要である「カンカンナンマイダ」を次世代に伝えるため、今回は同地区自治会役員らがカメラやビデオカメラを手に儀式の様子を撮影することにした。
鉦が巡回し、地区内の3カ所に「御祈祷の札」が設置された。法要会場である児童会館近くの「徳本上人碑」前と、会館内の祭壇で行われた薬師院禅林寺の阿部真祐住職による読経や、約30人の住民が数珠回しをする様子が記録された。
自治会は「現在も儀式が継続されているのは布片目地区くらいかもしれない。何としても後世にこの行事を残していくのが自治会の務めとも考えている」と話している。