お城や和歌浦を生かし 和市議選の観光政策

 和歌山市議選(21日投開票)で多くの候補者が訴えている政策のポイントの一つに「観光」がある。市内の宿泊者数は昨年、過去最高を記録し、日帰り観光客も増加傾向にある。これまでは白浜や高野山に行く観光客に素通りされることが多いといわれてきた市にも、目を向ける人が増え始めており、地域振興において観光を重視する考えは、多くの候補に共通する。

 和歌浦地区はかつて、日本初の屋外展望エレベーターが設置された奠供山(てんぐやま)や遊園地などを擁し、一大観光地として観光客が急増したが、交通の発展と反比例するように衰退していった。しかし、近年は美しい景観などを見直す動きが進み、2017年には日本遺産に認定され、再び観光地として復活しようとしている。

 市のシンボルともいえる和歌山城をはじめ、文化財や史跡の活用を考える候補も多い。昨年の豪雨による石垣の崩落や、耐震性の対策が必要とされる天守閣など心配な要素もあるが、和歌山城公園内は外国人のツアー客らが散策する姿が当たり前になり、桜の季節には県外からの花見客も多い。

 和歌浦の観光発信を掲げる候補は、道路の美装化や歴史的景観の維持、整備で魅力に磨きをかけるとし、雑賀崎などの海を生かしたダイビングなどのアクティビティーで誘客を考える候補もいる。

 和歌山城は中心市街地にあることから、観光振興の拠点と位置づける候補もいれば、観光の前に文化財、史跡の保全、整備を求める候補もいる。

 ターゲットもさまざまで、インバウンドの外国人観光客のさらなる誘致、療養を兼ねた医療観光の振興などの訴えがある一方、観光開発の前に、高齢者や障害者を含め市民が過ごしやすいまちづくりから始めるべきと主張する候補もいる。

 観光振興は、交流人口の増加や経済の活性化が見込めるが、観光客のマナーの問題や観光資源の毀損などが深刻な課題となっている観光名所も全国各地にあり、和歌山市の現状と課題にマッチした観光の在り方が重要になる。各候補の訴えの違いにも注目したい。

観光面でも市のシンボルとなる和歌山城

観光面でも市のシンボルとなる和歌山城