向陽の研究が総長賞 京大サイエンスフェス

 京都大学と高校・大学の連携協定を結んでいる13都府県と市の高校生による科学研究発表大会「京都大学サイエンスフェスティバル2018―科学の頭脳戦―」が先月、京都市の同大で開かれ、和歌山県代表として初参加した県立向陽高校の研究が総長賞を受賞した。

 同校の研究テーマは「南海トラフ巨大地震を想定した通信インフラの迅速な復旧に向けて」。環境科学科の課題研究授業の一環で、3年生の井上実柚さんと松村晃汰君ら4人の班が取り組んだ。

 災害によって携帯電話の基地局の機能が停止した際、上空から小型の中継機を投下することで通信インフラを復旧させるという研究。テーマを考え始めた頃、最大震度6弱を観測した大阪北部地震が発生し、被災地の通信障害を知ったのがきっかけとなった。

 実験では電波法の制限を受けない周波数帯の電波を使用。スマートフォンとパソコンに無線装置を取り付け、中継機の「缶サット」(空き缶サイズの模擬人工衛星)を通して、スマートフォン同士、パソコンとスマートフォン間で通信ができるかどうかを実験した。
 実験に至るまでには、搭載するマイコンのプログラミングや装置の製作、精密機器の扱いなど苦労も多かった。

 中継機は、和歌山市で開かれた「缶サット甲子園全国大会」でモデルロケットを使って打ち上げた他、校舎の屋上から落下させるなどしてデータを収集。中継機を通しての通信は成功し、GPSを使い投下した中継機の回収も行った。

 発表会が行われた3月16日、北野正雄副学長から「日本のスマートフォンキャリアの災害時の通信研究のために、取り組みを発信してみてはどうか」と講評を受けた。

 発表に臨んだ井上さんは「他の大会にも出たが、優勝できていなかったのでうれしかった。自分の身に災害が起きたときのためにも、研究の実用化ができたら」、松村君は「結果を聞いたときは言葉にならない気持ちだった。良い4人で良い成果が出せた」と喜びを語った。

京大で発表し、総長賞を受賞した井上さん㊧と松村君

京大で発表し、総長賞を受賞した井上さん㊧と松村君