谷脇攻略の智弁に軍配 打線で圧倒の決勝戦評

 29日に和歌山県和歌山市毛見の紀三井寺球場で行われた第101回全国高校野球選手権和歌山大会の決勝戦は、智弁和歌山が初回から持ち前の打力を発揮し、一方的な展開となった。両ベンチの声を紹介しながら試合を振り返る。

 那賀の先発投手はエースの谷脇。髙津亮監督は「智弁相手に小手先の継投をしても通用しない。智弁が負ける時は右の上手投げに苦戦するケースが多い」と見て、大一番を大会屈指の右腕に託した。

 準決勝までの5試合で55三振を奪い、箕島高の島本講平投手(元南海―近鉄)が1970年の第52回大会で打ち立てた奪三振の大会記録を更新した谷脇について、智弁の中谷仁監督は「外角の制球が良くテンポも速くて打者は的を絞りにくい。絶妙な高さに球が来る」と警戒。黒川、西川、東妻らの主力打者が甲子園で大阪桐蔭の柿木蓮(現日本ハム)、根尾昂(中日)、富山商業の沢田龍太(中央大)ら多くの本格派右腕と対戦してきたことを強調し、「良い投手とたくさん対戦してきた経験を生かしてほしい」と期待を寄せていた。

 髙津監督が「本当の力を爆発させてくれたら」と期待を込めて送り出した谷脇だったが、初回からいきなりつかまる。1番の黒川に先頭打者本塁打を右翼席へ運ばれると、さらに3連打を浴びて失点。この回だけで40球を要した。谷脇は「球が高く、カウントを取りにいったところを打たれた。細かい制球を意識し過ぎてボール球が多くなった」と悔やんだ。

 那賀は智弁の投手陣にも苦しんだ。準決勝までの5試合で37得点をたたき出したが、雑賀、安藝、千野、谷脇ら好調の上位打線がわずか1安打に終わった。髙津監督は試合前、「ことしの智弁は例年以上にバッテリーが良い。一筋縄ではいかないと思うが、そこを打ち砕いた時に勝機が見える。1点を取り風穴を開ければ相手はがくっと崩れるかもしれない」と期待していたが、試合を通じて連打は1本もなく、智弁の継投策の前に長打を打つこともできなかった。

 試合後、中谷監督は「投手が粘り強く投げてくれた。見ていて頼もしかった」と振り返り、髙津監督は「力は出せたが智弁は強かった。決勝にもう一度連れてきてくれてありがたく思っている。選手たちはよくやってくれた。本当に良いチームになったと思う」と選手たちをねぎらった。

 最後まで投げ抜いた谷脇は184球の熱投。15安打を浴びたがスライダーを武器に11三振を奪い意地を見せた。「最後まで投げられて良かった。悔いはない。大学でも野球を続けたい」とやり切った表情で話した。

優勝を決め喜ぶ智弁の選手たち

優勝を決め喜ぶ智弁の選手たち