日本最大の藩校・弘道館
前号では、徳川斉昭(なりあき)による「一張一弛」の心得を体現した、水戸市の偕楽園と弘道館の美しい梅林を取り上げた。偕楽園と合わせて訪れたい弘道館の歴史を紹介したい。
弘道館は、旧水戸潘の藩校。斉昭による藩政改革の重点事項に掲げられ開設。建学の精神として「神儒一致(神皇の道と儒教は離れ難い関係にあること)」「忠孝一致(主君に忠節を尽くすことと、親に孝行を尽くすことは同じであること)」「文武一致(学問と武道の両立)」「学問事業一致(学問の成果を政治に活かすこと)」「治教一致(政治と教育が付かず離れずの関係にあること)」の5項目を、斉昭自ら定めたという。
天保2年(1841)8月に仮開館式を行い、安政4年(1857)5月に本開館式の日を迎えた。当時の敷地面積は約10・5㌶で、藩校としては日本最大の規模であったという。ここでは儒学にはじまり、礼儀や歴史、天文、数学、和歌、音楽に加え、剣術や兵学、馬術、水泳など、文武両道で多種多様な科目が用意された。また、医学を志す者のために医学館を設け、製薬に関しても扱ったという。
特筆すべきことは、藩士とその子弟を対象に、15歳で入学し40歳まで就学が義務づけられていたこと。卒業という概念がなく、生涯にわたり学びの環境が用意されていたというもので、今でいう「生涯学習」そのもの。
平成27年4月には、「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」の構成文化財として、日本遺産に認定され、多くの観光客が訪れている。
(次田尚弘/水戸市)