紀州漆器を海外へ 海南の事業者タイ視察

国内市場の縮小が懸念される中、和歌山県内の中小企業の海外進出や販路拡大を後押しする取り組みに期待がかかる。昨秋、県と日本貿易振興機構(ジェトロ)が協力して取り組む、中小企業の海外展開支援事業で、漆器分野の専門家として参加した㈱やまが(海南市岡田)の山家優一さん(32)に、現地での様子や今後の展望を聞いた。

県とタイが進める地域間交流支援事業(RIT)の事前調査事業として、昨年10月15~20日、生活関連用品分野の現地視察に参加。漆器関係の他、日用品、ジュエリー、建具などを手掛ける県内九つの事業者が市場調査やビジネスマッチングを行った。

昨年5月、県とタイの工業省、商務省は産業連携と経済交流促進に関する覚書を交わしている。

訪問したのはタイ北部の都市、チェンマイと首都バンコク。チェンマイ市内では工業省に紹介された漆器事業者4軒、バンコクでは商務省の協力でライフスタイル商品の並ぶ国際見本市「スタイルバンコク」、「siam高島屋」などを訪問した。

事業者の訪問では、漆塗りと木工の2業種を視察。現地では作業を屋外で行っており、職人は高齢の女性が多く後継者不足が課題になっていること、木工製品には高い細工の技術力があることなどが分かった。

海南市内の事業者3社が、紀州漆器産地が得意とする合成漆器やスクリーン製版などの技法を提示すると、タイの事業者は手工業では困難な均一化された完成度や、黒地に金色の蒔絵(まきえ)が施された美しい仕上がりに高い関心を示していた。

商業施設視察で明らかになったのは、タイの国民は漆器を食器として使うことはほとんどなく、仏具やオブジェに使う例が多いことや、若手経営者らがヨーロッパに向け電気照明や家具などの輸出を手掛けていることなど。

今回の視察を通じ、タイの木工製品を大量に仕入れ、新たな商品開発を目指す県内事業者がみられ、紀州漆器のオブジェ製品などが現地の企画展示などで扱われる可能性がうかがえたことがあり、今後の盛んな協力が期待される。

視察を終え山家さんは双方のメリットとして、紀州漆器には手頃な価格と国内シェアの拡張を実現した革新的な技術、タイにはヨーロッパに販路を有している点を指摘。「タイで紀州漆器が受け入れてもらえるかどうか、EC(ウェブサイト販売)でテストマーケティングをしてみたい」と話し、「両国が友好関係にある今、コラボ商品の開発など具体的な取り組みを進めたい」と力を込める。

海南市の漆器事業者らと山家さん㊧(ジェトロ和歌山提供)

海南市の漆器事業者らと山家さん㊧(ジェトロ和歌山提供)