有田病院が安全宣言 3週間ぶり外来診療再開

医師や入院患者、その家族ら11人が新型コロナウイルスに感染した済生会有田病院(和歌山県有田郡湯浅町)は4日、病院関係者の検査で全員の陰性が確認され、最後の感染から2週間が経過したことを受け、伊藤秀一院長が「院内では完全にウイルスがクリアな状態になっている」と〝安全宣言〟を行い、休止していた外来診療をはじめ全ての業務を再開した。仁坂吉伸知事は「非常に限られた地域、時間の中だが、制圧に成功した。この事例は一つの希望になるのではないか」と述べた。

2月13日、同院に勤務する50代の男性外科医の感染が確認されたのを最初に、別の医師や入院患者、その家族や同僚の計11人の感染が次々と明らかになり、県内の感染者13人の大半を占めた。

最初の感染が分かった翌2月14日から、同院は外来診療や新たな入院の受け入れ、訪問看護・リハビリなどの業務を休止。職員や入院患者ら病院関係者約470人のPCR検査を行い、全員の陰性を確認し、さらに、最後に感染が確認された患者が転院した翌日の2月19日から3月3日までの2週間、新たな感染がなかったため、安全宣言となった。

4日朝、同院の玄関前には診療再開を知らせる看板が設置され、伊藤院長が安全を宣言。「経営を省みることなく、感染の流出防止に全力を注いできた」とし、2月の同院の収益が1億円近く落ち込んだことを明らかにした上で、「ここまで徹底して感染拡大防止を図った医療機関はほとんどないのではないか」と述べ、地域の中核的な医療機関として「地域の方々のために職員一同、一丸となって貢献したい」と決意を話した。

安全宣言には県福祉保健部の野尻孝子技監も同席し、外来患者を受け入れた近隣の有田市立病院や、検体採取に医師や看護師を派遣した公的医療機関などへの感謝を述べた。

整形外科の診察に訪れた湯浅町内の50代女性は「再開をずっと待っていた。対策を済まされていると思うので、他の病院に行くより、こちらの病院にかかる方が安心できる」、リハビリに訪れた同町内の男性(65)は「安心まではいかないが、大丈夫かなあと。(周辺地域には)この病院しかないので、他の病院にはかからず、家でできる範囲のリハビリをしていた。病院でやってもらうようにはできないので、再開はうれしい」と話していた。

再開を受けて仁坂知事は県庁で報道陣の取材に応じ、「可能性のある感染ルートを全部調べて、異常がないことを徹底的に確認した。みんなで力を合わせて頑張った結果、病院の正常化ができて本当に良かった」と述べた上で、「全ての危機が去ったわけではないので、これからも注意深く、緊張感をもって対策に臨んでいきたい」と表情を引き締めた。

安全宣言を行う伊藤院長㊧と野尻技監(4日午前8時、済生会有田病院で)

安全宣言を行う伊藤院長㊧と野尻技監(4日午前8時、済生会有田病院で)