こんもりとした緑の「虎伏山」
前号では、学びと住まいのニュータウンと題し和歌山大学とふじと台を取り上げた。取材機はさらに南下し和歌山市中心部へ。街中にこんもりとした緑の丘が見えてくる。和歌山市のシンボルともいえる和歌山城だ。
和歌山城は標高48・9㍍の虎伏山(とらふすやま)を用いた平山城。ビルに換算すると、およそ地上15階の高さに天守が築かれている。天守は大天守と小天守が連結して建てられた連立式と呼ばれる構造で、姫路城、松山城とともに三大連立式平山城の一つとされる。昭和10年に天守など11棟が国宝保存法に基づく国宝に指定されるも、昭和20年の和歌山大空襲で焼失したことは悔やまれる。
和歌山城を中心に広域を見ると、北側を流れる紀の川を天然の堀と見立てたことが明らかに分かる。元和7年(1621)、南側にも外堀を設けさらに大規模な城構えにしようと掘削を開始するも、幕府から謀反の疑いをかけられ堀の掘削を中止したことから、外堀は存在せず「堀止」の地名だけが残る。
城の南、かつての三の丸とされたエリアには県立近代美術館・博物館がある。ここは前号で紹介の和歌山大学教育学部の跡地。1994年に竣工した両館は黒川紀章による設計。優れた公共の建築物に授与される「公共建築百選」に選ばれ、これは、和歌山県唯一である。
県立博物館では紀州徳川家の旧蔵品をはじめ、和歌山県の歴史や文化を学べる場所。訪れて、わが街の魅力を発掘してはどうだろう。
(次田尚弘/和歌山市上空)