雑賀山に鎮座「紀州東照宮」

前号では、里山広がる豊かなエリアと題し、新旧さまざまな観光名所が点在する和歌山市東部の魅力を取り上げた。今週は南西方向に進路を変え、和歌浦周辺へと進みたい。
風光明媚な和歌浦エリア。空から眺めると「紀州東照宮」と「御手洗池公園」が目に飛び込んでくる。青々とした雑賀山の中腹に本殿が建ち、地上の参道から続く石段によるアプローチが特徴的。参道とつながる扇形の「御手洗公園」は、御手洗池の中央に浮かぶ島と、それに架かる赤い橋の存在が目立つ。紀州東照宮は元和7年(1621)、紀州藩初代藩主の徳川頼宜により創建。本殿から見る和歌浦湾の景色は美しい。
紀州東照宮を広域で見てみると、南東方向に玉津島神社、南北に長く伸びる片男波がある。紀州東照宮から玉津島神社へと延びる「あしべ通り」は空から見ても存在感のある幹線道路。
その先にある「不老橋」は、かつて、紀州東照宮の祭礼である「和歌祭」の際に、徳川家や東照宮の関係者が「東照宮御旅所」に向かう「お成り道」として架けられたもの。嘉永3年(1850)に着工し、翌4年に完成したアーチ型の石橋で、紀州藩10代藩主・徳川治宝の命により造られた。橋台のアーチ部分は熊本の石工集団の施工で、江戸時代におけるアーチ型の石橋は九州以外では非常に珍しいとされる。
平成20年に県指定文化財(名勝・史跡)、平成22年には国指定文化財(名勝)「和歌の浦」の構成要素の一つとなり、和歌山の文化を色濃く残す存在となっている。
秋の行楽シーズン。身近な観光名所である和歌浦エリアの魅力に触れてみては。
(次田尚弘/和歌山市上空)