演劇集団和歌山が50周年 県文で記念公演
和歌山県和歌山市を拠点に活動する「演劇集団和歌山」(植田幸男代表)の創立50周年記念公演『闇の道連れ』が10、11日、同市小松原通の県民文化会館小ホールで行われる。戦国時代の終盤、羽柴秀吉による紀州・太田城水攻めを題材にしたオリジナル作品で、半世紀の活動の節目となる舞台に向け、12人の劇団員は追い込みの稽古に熱が入っている。
同劇団は1970年5月9日、劇作家・演出家の故・栗原省さんをはじめ、県演劇界の「和歌山にぜひセンター的な創造集団を」との思いから誕生した。同市の県教育会館で結成総会が開かれ、当初は劇団名が決まらず、「演劇集団和歌山」は仮名としてのスタートだった。
同年は「人類の進歩と調和」をテーマに大阪万博が開かれた一方、著しい経済発展の中で公害など社会の矛盾が噴出していた。同劇団は、各時代の社会問題にも目を向けながら、「地域に根ざした芝居づくり」を合言葉に活動。2000年以降は座付き作家の楠本幸男さんの作品を中心に上演し、山入桂吾さん演出、鎌田昌信さん制作の体制を確立した。
教室や講座の開催など演劇文化を市民に広める活動にも取り組み、04年に県文化奨励賞、10年に市文化奨励賞などを受賞している。
記念公演の『闇の道連れ』は、10年に上演した『水に浮かぶ城』以来、太田城水攻めを題材にした10年ぶり2作目となる楠本さんのオリジナル作品。籠城戦のさなか、城内の牢に捕らわれた3人の男たちの運命を描く。
1人目は、うだつの上がらない自分を変えるため、暗殺や火付けに手を染めるようになった農民・新次郎。2人目は、根来忍者として太田城に加勢に来たが、信用されず捕らわれた忍者・レンゲ。3人目は、秀吉軍の武将・大坂四郎。3人が歩んできた人生、よりどころとするものなどが牢内で語られる。秀吉軍の苛烈な水攻めの中、3人はどうなるのか。
このほど行われた公開稽古では、本番の衣装を着た劇団員らが通しで演技し、せりふや舞台での立ち位置、音楽や照明のタイミングなどを入念に確認した。
新型コロナウイルス対策のため、会場は収容人数の半分の約150席で上演。楠本さんは「コロナと共に生きていかなければならない中、演劇をやりたいと皆で対策をしながら準備してきた。会場の半分しか入れられないが、50周年に見に来てくださる人たちと共に舞台をできるだけで喜びを感じている」と話している。
公演は10日午後6時から、11日午後2時からの2回。チケットは前売りが一般2500円、学生1500円(当日は各300円増)。11日はほぼ満席となり、10日は残席あり。県民文化会館や市民会館、和歌の浦アート・キューブで取り扱っている。
問い合わせは同劇団(℡073・445・4537、月・木・土曜の午後7時半~10時)。