車いす避難をサポート 県内初の養成講座

災害時に、車いす利用者の避難を手助けできる人を増やそうと、車いす避難サポーターの養成講座が、和歌山県内で初めて紀の川市で開かれた。車いすでの避難は介助者のみでは負担が大きく、地域の支援者の協力が不可欠。講師を務め、サポーターの輪を広げようと取り組む徳島文理大学の保健福祉学部理学療法学科の柳澤幸夫教授(45)は「助かる命を助け、地域の防災力を高めるためにも、すぐに手を差し伸べられる人材を増やしていければ」と話している。

稲穂会病院(同市粉河)で理学療法士として勤務する北村理奈さんが代表を務める「コミュニティ マーガレット」が主催。6日、粉河ふるさとセンターを会場に、医療や介護、消防の関係者ら約20人が参加した。

柳澤教授は2017年に車いすサポートに関する障害物の教材を開発。徳島や高知を中心に講座を開き、これまで450人近くが受講しているという。

講座で、柳澤教授は、台風19号や熊本の豪雨災害では障害者など災害弱者の避難支援の課題があらためて浮き彫りになったと指摘。避難場所までは多くの障壁があるため、避難を諦めてしまうケースも少なくなく、周囲の支援者による協力体制の構築が重要だと話した。

体験では、車いすの構造や仕組み、操作方法を紹介。会場には砂利や液状化、がれき、階段などを想定した六つの障害物が設けられ、参加者は2人一組で、車いすで進む技術を身に付けた。

柳澤教授は、前輪を大きく上げ、後輪のみで進むとスムーズに移動できるとアドバイス。階段では、利用者の背中側から両脇に手を入れて抱きかかえるなどして安全に移動させる方法を紹介した。

講義後には修了証が手渡され、福祉用具などを扱う㈱おかい商店(同市粉河)の岡井良樹社長(43)は「液状化の想定は、思った以上に移動が困難だと感じた。ちょっとした知識と体験で、命を助けるまちづくりにつながるはず。災害時に備えて、地域にサポーターを増やしていきたい」と話していた。

 

さまざまな障害物を越えて進む方法を学んだ