キテンハタの標本 脇本君が自然博に寄贈
本州では珍しいハタ科の魚「キテンハタ」を、和歌山県和歌山市の県立向陽中学校2年生の脇本総志君(14)が串本町二色付近で発見。標本にして海南市船尾の県立自然博物館に寄贈した。本州では標本に基づいた報告はないため、貴重な資料として同館で28日まで展示されている。
キテンハタは、インド・西太平洋に広く分布する魚。これまで標本としては鹿児島県の薩摩半島南岸、種子島、奄美大島、八重山諸島で記録されている。
脇本君は、父親が市場関係者で魚を扱っていたことから小学2年生から魚に興味を持ち、小学5年生で魚の調査を始めた。これまでも多くの海水魚を同館に寄贈しており、同館からの信頼は厚い。今回は2020年10月に串本町の堤防で調査を兼ねて釣りをしていたところ、紫褐色で斑点のある体長68・9㍉で未成魚のキテンハタを釣り上げた。
「キテンハタは和歌山にいるだろうと思って狙っていた」と脇本君。その後、同館へ持ち込むと、魚類専門の学芸員の國島大河さんから串本で採集されたキテンハタは標本に基づく本州からの初記録となるため、標本作くりを勧められた。さらに國島さん指導のもと、論文を執筆し、査読付き和文学術誌『ICHTHY』に1月19日付で掲載された。
キテンハタは移動せず定住する習性のため、釣り上げられた未成魚は黒潮に乗り串本沖までたどり着いたと考えられるという。最大約50㌢近くまで成長する。
脇本君は「周りの皆さんのおかげで論文を作成して発表できたのが大きな自信になった。今後はキテンハタと同じく珍しいオビハタなどの魚も採取したい。もっと魚を研究して将来は魚類学者になりたい」と笑顔。ことし9月に福井県で開かれる魚類学会で、小学6年生の頃から加太や串本で魚を調査し、集めたデータを活用して発表したいと目標を掲げている。
同館の入館料は大人480円、65歳以上と高校生以下は無料。午前9時半~午後5時。月曜休館。問い合わせは同館(℡073・483・1777)。