和歌山平野の成り立ちと防災意識

取材機は海から和歌山市全域を見渡せる位置に来た。西に開け紀の川を中心に街が広がる和歌山平野がよく見える。
和歌山平野は、紀の川の上流から運ばれた大量の土砂が堆積し形成された。和歌山城周辺から秋葉山へと続く小さな丘は、岡山、吹上と呼ばれる砂丘の名残とされる。砂丘に広がる松林の根元の砂が風雨により流された「根上がり松」はこの地域の歴史を物語るもの。先人が付けた、高松や小松原の地名からも地域の特徴を知ることができる。
海に開けた砂地の地形は、時に地震災害で甚大な被害に見舞われることがある。1400年代の地震と津波により紀の川のルートが変わったとされ、発生が懸念される南海トラフ地震への備えが必要。海の恩恵を受ける和歌山にとって、災害とはうまく付き合わねばならない課題といえよう。
防災士の資格を持つ筆者が子どもたちに防災教育を行う際、海から自宅までの距離を認識してもらうことがある。目安にするのが、和歌山港や和歌山マリーナシティで打ち上げられる花火が見えてから音が聞こえるまでの秒数。1秒間に約340㍍進むとされる音が何秒で聞こえるかで、海からのおおよその距離を測ることができる。
近ければ近いほど海の恵みを受けやすく、かつ、影響を受けやすいということ。自治体が発行する防災マップなども参考に、もしものときに備えることも、海と共存していく上で必要なことだと思う。
28回にわたりお伝えしてきたこのコーナー。空からわが街を俯瞰して見るという発想で、地域の魅力を紹介してきた。ぜひ、広い視野、異なる目線で地域を見つめ直し、郷土愛を深めてほしい。
(次田尚弘/和歌山市上空)