投手力見せた2試合 市和歌山の夏に期待
第93回選抜高校野球大会に出場した市和歌山は、2回戦で明豊(大分)に1―2で惜敗し、全国制覇の夢は夏へと持ち越しとなった。プロ注目のエース・小園健太(3年)ら投手陣は2試合2失点と好投し、守備も安定していただけに、「打撃がつながりを欠いた」(半田真一監督)ことが、接戦の行方を決めた。
市和歌山が放った安打は初戦が6本、2回戦は4本で、長打は1本のみ、連打は出なかった。
計10安打のうち4本は3番を打つ主将の松川虎生(こう)(3年)によるもの。チーム1の長打力を誇る松川の前に走者を出したかったが、走者を置いて松川に打順が回ったのは8打席のうち2打席のみだった。
各回の先頭打者が出塁するケースも2試合とも1度と少なく、思うように相手投手を攻略する糸口をつかめなかった。
夏に向けて課題が残った打線の中で光ったのが、2試合に7番・一塁で出場した亀井新生(同)。県岐阜商との初戦では、9回にサヨナラ打を放ち、明豊戦でも7回1死1塁から低めの球を鋭く左前に弾き返し、好機をつくった。
昨秋は1番打者を任されながら、満足できる打撃ができずに苦しんだが、甲子園の舞台で「市和歌山に亀井あり」と印象づける活躍を見せた。
投手陣の収穫は大きかった。小園は2試合で14回、1失点と、大会屈指の右腕の前評判にたがわない快投だった。
県岐阜商戦では右打者の外角に逃げていくスライダーがさえ、明豊戦では威力ある直球とキレ味抜群のチェンジアップ、ツーシームで左の強打者らをキリキリ舞いさせた。
背番号10の米田天翼(2年)も好投した。明豊戦に先発すると、力強い直球とフォークを中心に打たせて取り、4回を1失点に抑えて試合をつくった。
今大会から初めて導入された球数制限もあり、甲子園で勝ち上がって全国の頂点を目指すには、エースだけでなく、力ある複数の投手がますます欠かせなくなっている。
まして夏は炎天下でのより厳しい戦いが予想される。米田が甲子園で実績を積んだことは、市和歌山の投手陣全体の底上げにつながる。
聖地での経験を生かし、投打に磨きをかけ、進化した市和歌山が見られることに期待が高まる。